世の中にはいろんな種類の奇跡がある。
自分がちょうど食べたいものを、食べたいタイミングで、作る。しかも冷蔵庫にだいたい食材が揃っていて、時間もあって、作る気持ちの余裕もある。
これが奇跡でなくて何であろう?
毎日自由で思う通りに過ごせたら、味わえない喜びかもしれない。
人生はプラスでもマイナスでも計れない、万華鏡のようなもの。一つ楽しみを失えば、また新しい楽しみに出会える。一つできないことが増えたら、また別の喜びや奇跡があらわれる。
さて、端的に言おう。
長男の幼稚園時間に、次男がめったにない昼寝に入り、しかも私はお腹が空いていて、ツナのトマトクリームパスタを作る材料が揃っていた。
奇跡に次ぐ奇跡、なんかもう奇跡の3乗であった。
ツナとオリーブのトマトクリームパスタを作った
なんでもないことのようで、これまた2024年のやりたいことリスト100のうちの1つが突如として達成された輝かしい瞬間であった。
この本のトマトパスタが作りたい
辻仁成さんの、キッチンと料理と息子への愛が詰まった、とてもステキなエッセイでありレシピ集『父ちゃんの料理教室』。
「あとがきにかえて」の中で紹介されていたトマトとツナのパスタである。
ちっともゴージャスじゃないし、豪華でもない。日々の味である。
そんなふうに紹介されるパスタの、なんと綺麗な色。めちゃくちゃ美味しそう。そしてシンプルな材料。
作り方は箇条書きでなく語り口調で、あたかも目の前で実演してくれているような臨場感がある。
さっそくキッチンに立つ
AM11:30、黄金の料理時間が始まる。
鍋でパスタを茹でるための湯を沸かしつつ、ニンニクと玉ねぎを炒める。もうすでにとびきり美味しい匂いがキッチンに満ち満ちている。
レシピではケッパーやアンチョビも入れるのだが、それらはオシャレな人のクローゼットにしか入っていないクラッチバッグやパンプスのようなものだ。我が家にはリュックと運動靴しかない。
それでも元気よく走ってしまおう。
白ワインを加え、トマト缶で煮込み、
ツナ缶をたっぷり加えてまた煮込む。レシピにはないけど、冷蔵庫で眠っていたオリーブを加える。
料理の中でなぜか最も苦手な「茹で」を無事にクリアし、
生クリームの代わりに牛乳を混ぜてできあがり!
至福のランチタイム
誰にも何にも邪魔されずに、楽しい気持ちだけで自分のために作った熱々のパスタを、ゆっくりといただく。
買ったばかりの大好きな文庫本とともに。
ふいに贈られる、神様からのギフトとしか言いようがない。ありがとうありがとう、と誰にでも何にでもなく涙しつつ、至福のランチタイムだった!
病み上がりの第二ラウンド。牛乳から生クリームのステージへ
数週間後、風邪をひいた。高熱から抜け出した翌日、私はぼんやりした頭で思った。
「作りたい……」
今作れて、今食べられそうなもの。お粥とかうどんではない。病み上がりの胃袋がメチャクチャに欲していたのは、このトマトとツナのパスタであった。
生クリーム登場
本来のレシピでは最後に生クリームを入れてトマトクリームにするのであるが、前回の私はケチって牛乳で凌いでしまった。冷蔵庫に生クリームがあったのにである。
自分一人のパスタに、生クリーム大さじ2など使えない……
半端な量。貴重な生クリーム。賞味期限もまだあるし。
だが、私は知った。
自分のために生クリームを使える者こそ、真に自分を愛することができるのだ。
めちゃくちゃ美味しい!
正直、段違いに美味しい。この日は麺を三倍量にして夫の分も作ったので具が少ないが、いずれにしても味の深みが全然違う。こちらが催促せずとも夫が「おいしい」を連呼していた。それだけでお分かりと思う。
当たり前だが、なんであれレシピ通りに作るべきなのだ。
ケッパーとアンチョビも常備しよう。クラッチバッグとパンプスで、夢のパーティーに足を踏み入れてみなくては!
Sweet+++ tea time
ayako
今日のおすすめ
『父ちゃんの料理教室』
読むと、たまらなく作りたくなる。
キッチンという秘密基地でいろいろ実験したいッ!野菜とかお肉とかオーブンとか鍋とかみんなと戯れたいッ!という気持ちがめちゃくちゃに高まる一冊です。
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