5歳長男が嬉々として尋ねてきた。
「ママは大人になったら何の運転手になりたい?」
ツッコミどころが多すぎる。私はもうだいぶ大人で何の運転手にもならないことだけは明白であるが、「将来の夢」ならぬ「人生の目標」はひっそりと掲げている。
人生の目標=どんな人間でありたいか。この問いに対してふと思いついた言葉が手帳に書いてある。
「愛にあふれ、ユーモアを忘れない人」
人生の目標が決まれば、日々の細かな行動の指針も容易に決まる。一体何の話をしているのかと思われるだろうが、端的に書くとこうである。
ひき肉を解凍したが全くハンバーグを作りたい気分ではないときの解決方法について語りたい。
私は料理がわりと好きで、夕食作りが一日の癒しの時間となっている。
しかし、子どもたちも喜んで私の手料理を食べ、健康かつ理想の食卓を囲んでいるかといえば、全くの否である。長男も次男も偏食やら食べムラが色々あり、毎日毎食何を食べるんだか…というぐだぐだ感。
間違いなく生協の冷凍食品が一番人気だし、それしか食べない日が普通、かと思えばそれすら食べない日もまた普通。普通とは何か。チーズとか海苔とかバナナとか調理していない素材の人気がすごい。そして二人とも謎に大きい。
そんな5歳と1歳であるが、二人とも割と高確率(60-70%くらい)で食べてくれるのがハンバーグである。
最近もう何を作っても食べないし、ハンバーグいくか…決死の覚悟でひき肉を冷蔵庫に移し、翌日の夕方に呆然とする。
誰だひき肉なんて解凍したのは。
毎回お決まりのコースである。
ハンバーグは、私の中で最も面倒な料理の一つである。こねたり丸めたり空気抜いたり、手もボウルも汚れるしなんかいろいろ大変な感じ。平日は絶対に手を出さない料理だ。
さて、解凍したひき肉である。疲れきった夕刻、心は全くハンバーグを向いていない。しかし子どもたちが喜んで食べてくれる(可能性が高い)のだから作るべきか。さあ、どうする?
そんなとき、指標となるのが「人生の目標」である。愛にあふれる人間たるもの、愛にあふれる料理をすべきだろう。
つまり…
ハンバーグは来世で作ろう。
自分が楽しく作れない料理に、愛はあふれないのだ。さあ、では何を作ろう!
ウキウキし始めた私の頭に閃きがあった。そうだこんな日のために常日頃から意味もなく分厚いレシピを読み込んでいたのではないか。
「挽き肉のマッシュポテトのせ」
愛する料理本『バスクの修道女 日々の献立』242ページのレシピである。材料もほぼ揃う。これは運命では?!
さっそく野菜をブレンダーでガーッと微塵切りして炒める。
ひき肉を加え、スパイスを振る。妹からハンガリー土産でもらったパプリカパウダーがまた役に立った!
奥の小鍋で茹でていたじゃがいもを、つぶして牛乳塩胡椒でマッシュポテトに。
炒めた野菜と挽き肉の上に、マッシュポテトをのばして、
フライパンごとオーブンへ(これができるからティファールのフライパンは最高なのです)
焼き上がり。マッシュポテトにこんがりとついた焼き目。ああ、美味しそう!料理って、なんて楽しくて愉快なんだろう!世界は輝き、愛はもうほとばしるようにあふれ出していた。
そんなこんなで迎えた夕食。サラダや残り物もいろいろ並べ、焼きたての挽肉料理もフライパンごとテーブルへ。
「おいしい!」
夫は一口食べて歓声を上げた。彼はなんでもそう言って大量に食べる男だ。
1歳5歳も恐る恐る口に入れては目をぱちくり、「ママのごはん、おいしい」……などということはもちろんなく、何なら一口も食べなかったが、楽しい夕食には変わりなかった!(ポジティブ)
さて、後日。
私は懲りずにまたも挽き肉を買ってしまった。愛にあふれるあまり、子どもが食べるかもしれないハンバーグを諦めきれないのである。
牛豚合挽700グラム。次回の私はどう出るか。ハンバーグ以外のひき肉レシピにどんどん詳しくなっていきそうな気配しかないが、いつだって展開を面白がるのみ。
何の運転手にもなれなくても、理想の子育てとはほど遠くとも、毎日の生活はやっぱりめちゃくちゃ楽しいものである。
Sweet+++ tea time
ayako
愛する本とフライパン
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