おいしい飲み物を用意して、文庫本を手に取る。10分でも1時間でも関係なく、新しい世界に没頭する。
マグカップの温もりを包み、ページをめくる指の感触を楽しむ。自由で贅沢な瞬間というのは、いつだって自分の手のひらの中にある。
2019年は30冊くらいの本と雑誌を読んでいた。特によかった7冊をブログにもまとめておきたい!
01。『1ドルの価値/賢者の贈り物』O・ヘンリー
初夏のころ、上野の森ブックフェスタで買ってから、毎日のようにページをめくって楽しんできた一冊。
O・ヘンリーの小説は英語でも日本語でもいくつか読んだことがあったけど、久しぶりに手にとって、あらためてうっとりしてしまった。書きたいことはたくさんあるけど、一つだけあげてみる。
人生は"むせび泣き"と"すすり泣き"と"微笑み"から成り立っていて、なかでも"すすり泣き"の時間がいちばん長い
夫のクリスマスプレゼント代が捻出できなくて悲しみにくれる主婦のデラが泣きだしたときのこの一節はなんとも良い。
辛いことがあって大泣きしても、それは長くは続かない。すすり泣きの時間に、デラは辺りを見回し、この状況をどうにかできないかと考えを巡らせる。
落ち込んだり塞いでしまう日があっても、「人生は"すすり泣き"の時間がいちばん長いんだし、こんなものだよね」と思えたらいい。
O・ヘンリーの短編は、どこかほんの一滴の悲しみがにじんだ、でもあたたかい物語が多い。
デラが泣き出すシーンで始まるこの短編(表題にもなってる「賢者の贈り物」)も、最後はやっぱり"微笑み"で終わるのだ。
翻訳物だけど読みやすいので、ぜひ手に取ってみてほしい。小説は一番生きる力になると思う。
02。『しないことリスト』pha
こういう「ゆるく生きよう」みたいな本って本屋さんにもたくさん並んでて中身が薄いのが多いけど、phaさんの本は濃い。凝り固まった考え方を変えるきっかけが詰まっている。
たくさん取り入れたいことが書いてあるけど、なんとなく心に残ったのはこの部分。
もちろん、人生というのは思いどおりにいかないものだから、つらいけどイヤなことをやらなきゃいけない状況はある。そういうときは仕方がないからがんばるしかないんだけど、「こんなにがんばってるから報われなきゃおかしい」と思ってはいけない。がんばるかどうかと報われるかどうかは別問題だからだ。 結局、そういうつらい状況もタイミングの問題に過ぎない。だから、つらいときは、「ラクなことばかりじゃないけど、まあ人生そんなもんだよな」と思って頭を低くして待っていればいい。そのうち風向きが変わって少しラクになるときが来る。
良い意味で現実的で、いろんな本や経験に裏打ちされた内容なので、参考文献も読んでみたくなる。
とてもオススメです!
03。『世界のキッチンから 商品開発と写真の関係』高橋ヨーコ
朝食写真好き、キッチン風景写真好きにはたまらない、もう永久保存版な一冊に出会ってしまった…
ツイッターか何かで見かけてからずっと気にしていた写真集。本屋で実物をパラパラとめくったらもう即決だった。
キリンビバレッジの清涼飲料水シリーズ「世界のKitchenから」の商品開発の過程でうまれた写真たち。
世界各国のキッチン風景や朝食・お茶時間の写真がぎっしり詰まっていて、その色彩や光の感じがあたたかくノスタルジックで…
疲れた夜にいつまでもめくっていたくなる、明日の朝食が楽しみになる、そんな宝物の写真集。
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04。『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか』チェコ好き(和田 真里奈)
読み応えあるブックガイドでありエッセイ。これはちゃんとした感想を書きました!
ここで紹介されている島本理生さんの長編小説を読んでみたらそれもめちゃくちゃ面白かった…
読みたい本が芋づる式に増えていくので楽しみがずっと続く!
『寂しくもないし、孤独でもないけれど、じゃあこの心のモヤモヤは何だと言うのか』をAmazonで見てみる
05。『考える教室 大人のための哲学入門』若松 英輔
いつも一億個くらいやりたいことがある私ですが、稀にやってくるんですね、あまりやりたいことが思い当たらない時期。
そんなぼんやり過ごしてたときに、スーパーの雑誌コーナーで見つけた一冊。
すごく面白くて読みやすくて、ブログの下書きに感想も書いたのに次の日に読んだらなんか恥ずかしくなってきて公開できなかった。
特にハンナアーレントの思想は、最近考えてることのヒントになっている気がして、心に引っかかっている。
もう一度読み直したい。
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06。『あのこは貴族』山内 マリコ
朝4時まで読んでしまった長編小説。
東京の真ん中の、ごく一部には本当に今も"貴族の末裔"という人たちがいて、普通に生活している分にはまず接触がない、閉じられた狭い狭い空間を生きている。
その世界と接触を持つことになる、地方から上京してきた主人公の物語。
私は東京という街のいろんな姿を考えるのが好きで、特にこの会話が心に残った。
「こういう店に来る人って、みんなどっか似てるでしょ。雑誌から抜け出したみたいっていうか。東京に憧れて、東京に馴染むようにおしゃれしてる人のおかげで、こういういかにも東京〜って感じの場所は、もっともっと東京らしくなるんだよ。あたしはそういう人たちが作り出してる東京が、好きなんだよね。本物じゃなくて、フェイクなのはわかってるけど」
「……その東京って、どんなものでしょうか」
華子は純粋にそれが知りたくてたずねた。華子にとっての東京は、生まれ育った故郷にほかならない。でもさっきから美紀の口にする"東京"には、まるで別の意味合いがあるようだった。
二年間も取材をして書かれたそうで、リアリティーに裏打ちされた面白さ。
ぐいぐい引っ張られる長編小説で朝まで読み切っちゃうって、至福の体験だといつも思う。とにかくおすすめ!
07。『一汁一菜でよいという提案』土井 善晴
この本に出会ってから、料理観が変わって、自炊の意味が変わって、お家ごはんを愛するようになった。
毎日、毎食、一汁一菜でやろうと決めて下さい。
これなら、どんなに忙しくても作れるでしょう。ご飯を炊いて、菜(おかず)を兼ねるような具だくさんの味噌汁を作ればよいのです。
「それでいいの?」とおそらく皆さんは疑われるでしょうが、それでいいのです。私たちは、ずっとこうした食事をしてきたのです。
単に「手を抜いてラクしていきましょう」という話ではなく、和食の歴史や成り立ちなど深い話がつまっていて、勉強になるし、生活というものを考えるきっかけにもなる。
自炊のハードルはぐっと下がり、でも満足度はめちゃくちゃ上がった。子育て中でも、とにかく毎日具だくさんのお味噌汁を作るだけならできるし、それで一歳の王子のご飯もできる。
お味噌汁と白米。あったかくてほっとする。変わりばえのしないことの良さ。だいたいはお肉か魚も焼くけれど、余裕がなければお味噌汁の中に豚肉を入れてしまえばいいのだ。
毎日のごはん作りのことを考えるのがゆううつという人にぜひオススメしたい一冊。
最後にひとつ好きなところを引用しておしまい。
一汁一菜のような身体が求めるお料理は、作り手の都合でおいしくならないことかあります。おいしい・おいしくないも、そのとき次第でよいのです。そう思って下さい。必要以上に味を気にして、喜んだり、悲しんだりしなくてもいい。
まとめ:2020年も一冊との出会いを大事に、読書を満喫するぞ〜!
たくさん読めないけど、そのぶん密度の濃い付き合いができたら。
言葉も字体も佇まいも、読んでる時間もすべてが美しいなぁと思ってしまう pic.twitter.com/le6dieGWRj
— ayako | 刺繍して書くひと (@Sweettteatime) 2020年3月2日
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コロナでお家にこもる週末の、楽しみが増えたら嬉しい。
ぜひぜひ手に取ってみてね!
(私も王子の昼寝時間に読むぞ〜!)
Sweet+++ tea time
ayako
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