無駄を愛して今日もゆく。ただのゴミ出しが思い出になる日

家から出ない夏休みを過ごしている。

週末やお盆休みなど夫が休みの日は電車で出かけるが、平日は1歳5歳と家にこもっている。

その日は次男のお昼寝時間がずれ、流れが変わり、いつも以上にバタバタと晩ごはんを準備していた。腰の周りにお猿2匹が巻き付いている状態で、一番奥のコンロで煮込み料理を作り、オーブンで野菜を焼く。

何をするにも「ママ〜」と呼ばれ1歳はグズリだし、狭いキッチンでそれを宥めるエンドレスループ、もうダメだ絶体絶命…!というところで救世主が帰還した。夫である。

新たな登場人物の登場にお猿たちは歓喜して駆けていった。突然の自由。定員オーバーだったキッチンに風が吹く。ここぞとばかりに最後の仕上げをし、あとは調理道具を洗って食卓のセットをするのみ。19時を過ぎている!

このあと夫がゴミ出しに行ってくれる間に、私が食卓の準備をするという段取りだった(管理人に遭遇したくないがために、夫は夜にゴミ出しをする)

ゴミをまとめて家を出ようとする夫に、気まぐれ5歳長男がついていくと言い出し、取り残されそうになった1歳が大声で泣き出した。

結果、1歳次男にもサンダルを履かせ、男3人でゴミ出しに行くことになった。まあ大変そうだが、その間に私が食卓の準備をすればスムーズなのは変わりない。だが玄関のドアを出ると、「ママ〜」と言って次男は不安で半泣きになった。じゃあ、仕方ない。

家族4人でゴミ出しに出発する。

それでなくても時間が押している平日夜の、究極の無駄である。しかし効率とは真逆の世界が子どもと過ごす日々というもの。

私は首周りが伸び過ぎて未知の領域に入ったTシャツにシワシワの短パン、薄緑の靴下という限界部屋着スタイルであった。誰にも会いませんようにと切に祈りながら1歳5歳と手を繋ぎエレベーターまでの廊下を歩く。夜なのに嘘のような蒸し暑さ。

「こーきっ!」

1歳次男が声を上げる。驚きと喜びに満ちたその顔を見た後、視線を追ったら夏の夜空に飛行機の光。「ほんとだ!飛行機だね!」「こーきっ!こーきっ!」

二人とも笑えるほど楽しそうな顔をしている。電車に乗ってちゃんと「お出かけ」する休日とは、また違う顔だ。どこにも行かないのがデフォルトの、地味な平日夜に突然散歩する(と言ってもマンション内のゴミ置き場に行くだけだが……)、イレギュラーな出来事が愉快でたまらないのだ。

特に次男はベビーカー移動が多いので、マンションの敷地内を自分で歩くだけでもう、開拓と発見の連続なのだろう。

というわけで4人連なってエレベーターに乗り、ゴミ捨て場に行き、晴れて誰も知り合いに会うことなく戻ってきた。次男はドアの前で「おうち!」と言いながらこちらを輝きに満ちた目で見つめ、最後まで楽しさを爆発させていた。

帰宅して、4人で手を洗い、またゴチャゴチャのキッチンからスタートである。調理器具を洗って食器を並べなくては。20時が近づいている!

無駄である。

だからこそ思い出に残る不思議。

毎日手帳に「なんでもないことを一つ書いてみる日記」という一行日記をつけているが、この日はゴミ出しのことを書いた。どこにも出かけない日の、一大イベント。

蛍なんて絶対見えない下町住宅街、一人だったら間違いなく見上げることのなかった飛行機は、キリリと光って進み、夏の夜空で美しく輝いていた。

写真は数年ぶりの花火です。

Sweet+++ tea time
ayako

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