新年の抱負ならぬ、新しい欲望の出現について

今から書く記号の意味がわかる人は、同志である。

PZ01、MT06×2、DB02、WN05。

とうとう気が狂ったか、謎の暗号を唱え始めたと思うだろうか?

否、これはれっきとしたサイゼリヤのメニュー番号である。

PZ01(マルゲリータピザ)、MT06(ハンバーグステーキ)2つ、DB02(キッズドリンクバー)、WN05(赤ワインのデカンタ500ml)。ここに大人用のパスタ2種類が追加され、我が家の定番オーダーとなる。ピザやワインが追加されることも多い。

*・*・*

 

サイゼリヤ。それは素晴らしいファミリーレストランである。リーズナブルで美味しくて、早く出てくるし間違い探しがあるし偏食男子たちが必ず食べてくれるメニューが常にある。

図らずもこれが2024年最初のブログとなったので、ayakoさんのお洒落かつ優雅な2023年を振り返ると、自炊自炊自炊サイゼ自炊自炊自炊サイゼ(ときどきマック)。

1月、家計簿をつけ始め、あらためて我が家のエンゲル係数の高さを思い知る。4月に宅食をやめ、憩いのキッチンで毎日毎日いろんな料理を作った。そして週末はよくサイゼリヤのお世話になった。

そのサイゼリヤの注文方法は、メニュー表を見ながら紙に記号を書くというアナログスタイルである。それゆえに我々はメニュー番号を暗記するに至った。

席に案内されるや否やすぐに定番の記号たち(PZ01、MT06×2、DB02、WN05)を指定の紙に書き入れ、大人のパスタを速やかに追加記入してオーダーボタン。じっと待つということがエベレストの如きハードルとなる次男(パワフル2歳)を連れているため、外食は常にスピード競技。私たちはあまりにも熱心に技を磨き続けた。

*・*・*

 

ある日、夫が呆然として言った。

「いつか、サイゼリヤでゆっくりワインを飲みながら、誰にも邪魔されずに間違い探しをしたい…」

衝撃的な欲求の発見であった。独身や二人暮らしの頃には1mmも思わなかったことである。

私も夫もお酒好なので、待ち時間はワインを飲みつつ、メニューと一緒に置いてある間違い探しを眺めるのが習慣となっている。しかしとにかく落ち着かない。2歳が飽きたり5歳と2歳がケンカし始めたりフォークを落としたり到着したハンバーグを切り分けたり、常に何かが勃発し続けている。

もしも突然、大人だけで、ゆっくりできる時間が現れたら。そんなときにはファミレスを選ばないんだろうが、しかし妄想は止まらない。見慣れているようでじっくり見る暇のないサイゼリヤのメニューをちゃんと眺め、おつまみとワインをまったりと楽しむ。間違い探しを真剣に隅々まで見つめ、穏やかな気持ちで10個を探し当てる。なんという贅沢な時間!

「いつかやろうね」

そう言って笑いながら、私もまた、自分の中の恐ろしい欲求に気づいていた。

「いつか、サイゼリヤでゆっくりコーヒーを飲みながら、誰にも邪魔されずにデザートを堪能したい…」

もしも突然ひとり時間が現れたら。そんなときにはファミレスを選ばない気がしなくないが、しかし妄想は止まらない。ティラミスクラシコ、トリフアイスクリーム、ジェラート&シナモンプチフォッカ。いつも時間がなくて素通りする未知の憧れデザートメニューを注文して、ドリンクバーの気楽なコーヒーでぼんやり。なんという贅沢な時間!

独身や二人暮らしの頃には1mmも思わなかったことである。あの頃、サイゼリヤに行くこともなかったし、その魅力も知らなかった。子育ても6年目に入り、自分たちの中に生じた新たな欲求に、衝撃しかない。

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一つ言えることがある。

欲望はいつだって地続きなのだ。

いきなり日本橋の小洒落た店で飲もうとは思わないし、いきなり表参道のフォトジェニックカフェに心は飛ばない。なんだか想像もできないし緊張してリラックスできそうにない。

小さな欲望は一つずつ手を繋いでいて、全く新しいものに気持ちは追いつかない。見たことのないご馳走より、ちょっと特別おいしい親子丼を食べてみたい。

そして親子丼はめちゃくちゃ美味しい。

いったい何の話をしているんだという感じであるが、サイゼリヤは素晴らしいファミリーレストランであるし、いまの日常とその隣の新しい欲望も、全部丸ごと可愛がって2024年を過ごしたい。

今年もどうぞよろしくおねがいします。

今日の写真は、2023年秋に焼いた、大きなプリンです。

Sweet+++ tea time
ayako

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