子育て6年目に見えてきた、新たな世界線

この夏、狂ったように同じ鉄道博物館に通っていた。5歳長男がどうしてもそこに行きたいと毎週末リクエストしてくるのである。

博物館。それは「行く」ものだと思っていた。まさか「通う」というスタイルがあったとは。

2週連続の頃、まだ苦笑しつつも新鮮さがあった。レトロ可愛い電車の写真を撮ったりして自分なりにも楽しもうとしていた。

3週目、驚きが恐怖に変わっていく。当然ながらもう撮る写真などあるはずもなく、カメラも持参しなくなる。そして5週目の諦め、8週目の達観……単に「飽きる」を通り越して新たな気づきが生まれて行った。

まず、展示物の説明文を読むようになる。鉄道模型自体はもう見飽きたし乗り飽きているわけであるが、そういうアトラクション的楽しみ方は終わり、知的探求のために文字を読むようになる。暇なのだ。

やがて、ご自由にお取りくださいコーナーに置かれている月刊誌をチェックするようになる。あ、あの駅が特集されてる!この車両って昔はここで使われてたんだ等の豆知識が増えていく。頻繁に通いすぎているため、月刊誌が7月号から8月号に変わっていると「おおッ!」となるし、それで時の流れすら感じ始める。狂っている。

最後に、匂いを覚える。扉が開いた瞬間、あ、これ、この博物館の匂いだよなぁと不意に思った。おばあちゃんち、みたいな存在感を出してくる。想像を超える故郷。

子育てで世界が広がるかといえば謎だが、新たな世界線が見えてきたことだけは確かである。

*・*・*

 

やがて我々は、この狂気の博物館ループの、頻度を下げる方法を見出した。

「カレンダーにあらかじめ予定を書き入れておく」

何もないと「鉄道博物館にいこう!」スイッチが入り他の案は全て却下されるため、前もってカレンダーの週末欄を埋めておくのだ。図書館に行く、動物園に行く、何でもいい。5歳長男は予定があればそのとおりに実行したいと思うらしく、これは有効だった。

ただし、落とし穴もある。うっかり先の週末で空白の日があったりすると「この日に鉄道博物館に行くって書いてほしい」と逆に予定をブロックされるのだ。油断ならない。鉄道博物館を巡る大人と子どもの攻防が、のほほんとしたぐりとぐらの壁掛けカレンダーで繰り広げられる。

*・*・*

 

まあ、そんなわけで結局、月に一回くらいは「通って」いるわけだが、行くたびに思う。いつかわからないけれど、どこかで必ず、最後の鉄道博物館訪問の日が訪れるんだなぁと。それは今日で卒業!と思って迎えるのではなく、振り返ったらあれっきり行ってないというふうにひっそりと終わるのだ。

子育てはいつだって、そういうふうに過ぎていく。最後を最後と知らず、無数の思い出を見送る日々。

しんみりするには、あまりに通い過ぎてリアルに気が狂いそうであるが、子育て6年目の新たな世界線を、面白がって歩めたらいい。

(さあ、12月のカレンダー、書き込むぞー!)

Sweet+++ tea time
ayako

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