「この奇跡に満ちた一週間の日記を、四文字で言い換えなさい」

生活への愛、それは今という時間への研ぎ澄まされた集中力に他ならないのだ。

*・*・*

 

いつもと違う児童館に行く。

片道30分を歩くその道が最高の緑道で、木漏れ日は美しい秋の一日を祝福するように降り注ぎ、花は咲き乱れて蝶を集めている。

帰りにスターバックスコーヒーでコーヒーを買った。

スタバは素晴らしいコーヒー屋さんだと思うけど、その最大にしてほとんど唯一の弱点は、さりげなく頼んだ飲み物がド甘い事件が度々発生することである。「甘くないコーヒー」とか「甘くない紅茶」を探すのに異常に苦労している。

「こちらはオーツミルクも豆乳も調整されたものを使っているのでその甘味があって、ほんのり甘いという程度ではあるんですがウンタラカンタラ…ちなみにこちらはどれも激甘です」

かなり正直に語ってくれる店員のお姉さんが魅力的すぎる。

しかし甘くないかつストレートでもないコーヒーが分からなかったので、諦める私。

「もうドリップコーヒーにしておけば間違いないですよね」

面倒な客を自覚してます恐縮です風に自らクローズしようとしたら、その下にある何たらというコーヒーは上にミルクが乗ってるだけで本当にお砂糖的な甘みはゼロだと教えてくれた。

「それにします!すみませんお手数をおかけして」

「とんでもございません!」

スタバの店員さんってどうしてああもパーフェクトなんだろう、ありがたくて泣ける、これからは迷惑をかけないようにスムーズに注文しようッ!

そう心から思うのに「何たら」の部分が全く思い出せない。

定番お散歩コースにはないスタバ。緑道を歩いていつもと違う飲み物を飲むってなんて幸せなんでしょう。

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これまたはじめての児童館に出かけてみた日。片道25分。

川沿いを歩きながら、「あの橋の向こうはどうなってるんだろう」と毎回思っていた向こう側に行けて嬉しかった。散歩はこういう小さなことが異常な興奮と喜びをもたらしてくれる。

帰りにはいつもと違うスーパーに寄る。ここのエレベーターに乗るのが四歳長男の楽しみなのだ。何がそそるのか、近所にいくつか「推しエレベーター」がある。

肝心のスーパーは混んでるからいつもは寄らない(エレベーターだけ乗って降りて帰る迷惑な客です…)んだけど、この日は料理をする必要があったので入店。長男が子ども用カートを押してくれるので、お買い物は最近リアルに助かる。

そこでオーガニック?産直?厳密なところは忘れたけど「ちょっと珍しくていい野菜コーナー」みたいな小さな棚を見つける。チラリと見て、ハッとする、只者ではないぞこの棚は…

カリーノケール。私が大好きなちょっと珍しくて楽しい野菜が、なんでもなく座っている。奇跡!とその隣をみると、スイスチャード!奇跡!

類は友を呼ぶというように、奇跡は奇跡を呼ぶ。その下の段を見たらゴロゴロと二つ転がってるんですね。

ビーツ。愛する私のたからもの。

心の中で泣きながらカートに入れる。ビーツビーツ!嬉しすぎる!

大量に買って下拵えし冷凍したビーツは産後いくつかダメにしてしまって、意外とすぐに消化しないと難しいらしいと知った。やっぱりひと玉を近所のスーパーで普通に手に入れられないとダメなんだと、ビーツから離れた生活を送っていたここ半年。

ボルシチを作ろう。

戦争のせいで、ボルシチの作り方のブログも書いたのになんとなく公開を躊躇って下書きに眠っている。ボルシチはそもそもウクライナの郷土料理だけどそんなことより、あの美しい食べ物に何の罪があろう。愛する薔薇色のスープよ!

カリーノケールは柿とカッテージチーズとサラダにしよう。もうウキウキが止まらない。帰り道、長男はスーパーで選んだおそらく生まれて初めてのグレープフルーツジュースを川沿いのベンチで飲んだ。私は水筒のお茶。

エコバッグの中にビーツがあるので、もう何もいらない…

*・*・*

 

また別の児童館に出かけた日。ここは近いけど久々である。どのくらい久々かというと一年以上ぶり。二人とも楽しそうに遊んでいてよかった。

帰りのコンビニで「回したらカラフルなガムが出てくるやつ」を長男がやりたがるので(彼はガムではなくビー玉だと思っている)、いいよと財布を開けたら10円玉がなかった。

お金を崩すために、レジ横で自分で作るタイプのドリンクに挑戦する。いつも行くコンビニの、いつもは飲まないカフェラテ。

レジで横目に見つつどうやって作るんだろうと毎回何となく疑問に思ってたけど、ボタンを押すだけなんですね(そりゃそうだ)。やってみると何でもない、でもそれが実感できることで生きるのは一つ一つ楽になるもの。自分でフタをするのも楽しい。

カフェラテはおいしかった。長男が「ビー玉(この日は赤だった)」を片手に小さな塀を歩くのを見守るというよくわからない待ち時間(子育て中よく発生)に、味わって飲む。

薄いブラウス一枚で、ここちよく涼しくいられる。秋、その煌めく季節よ……

さらに帰り道、毎回家の中で音楽を聞いては地団駄を踏んでいた移動パン屋に遭遇する。長男と歓喜!奇跡は愛しいカルガモのように連続してやってくる。

大好きな分厚いクッキー

何の祭りかというレベルで、たくさんパンを買う。エッグタルトと、無花果が入ったのが特に楽しみ。

秋は日のさす向きが変わるので、帰宅したときリビングに光が差し込んで木漏れ日がきらきら揺れているのがまた最高です。

この感じが好き

*・*・*

 

四歳〇歳と過ごす何でもない、でも宝石が散りばめられたような、一週間の日記を書いてみた。

最後に、一つ問題を出したい。

この一週間の日記を漢字とひらがな合わせて四文字で要約しなさい(なぜテストはいつも命令口調なんだろう)

 

秋は最高(4文字)

 

そういう話である。

涼しいって素晴らしい。どこまでもいくらでも散歩できる、一年のうちそう何日もないスペシャルな日々。ほんの少しいつもと違う出会いに恵まれた、でもここではないどこかに焦がれていたら何も見えない「ふつう」の日々。

生活への愛、それは今という時間への研ぎ澄まされた集中力に他ならないのだ。

Sweet+++ tea time
ayako

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