「いつか行きたい」を叶える日。憧れの深大寺に子連れで行ってみた話

「深大寺に行ってお蕎麦を食べる」

長年やってみたいことだった。

かれこれ十年以上ずっと憧れの地に君臨している、深大寺。緑深い大きなお寺、参道に並ぶお蕎麦屋さんや甘味処、手作り市があって湧水が有名。温泉もある。

定期的に「深大寺」を検索し、出てくる画像を舐めるように眺め、興味はめちゃくちゃに膨らむばかりなのに実行できないまま時は過ぎる…

絶妙な距離感なのだ。

東京である。一泊するほどでは全然ないため旅行先としては浮上しない。しかし西だ。EAST TOKYO住みの私にとってはサクッと行くには少々遠く、週末のお出かけ先にも選ばれない。

ましてや常にベビーカー大荷物で0歳4歳と行動を共にしている今となっては…

「いつか行きたい」なら今行こう

「夫婦二人のときに行っておけばよかったなぁ」

読んでいた旅行エッセイに深大寺に行く話が出てきて、やっぱりすごく楽しそう。定期的に訪れる深大寺欲がまた盛り上がる。

「今は大変だからなぁ…二人がもうちょっと大きくなったらいつか行こう」

文庫本から顔を上げると、夫は何でもないことのように言った。

「じゃあ明日行く?」

異常にフットワークが軽く、どこへでも行く人だ。特に食べ物が目的の場合は。

「いつかじゃずっと行けないよ。行きたいなら今行ったほうがいいよ」

かっこいい名言のようなものを残して、夫は寝室に消えた。ステーキ焼き肉ラーメンなら西へ東への男である。深大寺は蕎麦で有名だが、果たして引力を発するのかどうか…

夜中、その後も別の本を読んでいたら、こんな一節が目に飛び込んできた。

いつだって行ける場所にはいつまでも行かない

(安達茉莉子『臆病者の自転車生活』)

これは…

神のお告げではないか…

読書の神様が、私を深大寺に導いている。そうとしか思えない。折りしも翌日は祝日、元からの予定はキャンセルとなり暇であった。

行くしかない。

勝手に啓示を受けた私は、本を閉じていそいそと布団に潜る。

明日は8時までに起きようと心に誓う。そんなゆるい誓いでいいほどに、深大寺は実は全然遠くないのであった…

新宿から40分で、日帰り旅行気分を満喫できる深大寺

寝坊した。昨夜は潔い名言を残した夫も熟睡、いっこうに布団から出てこない。

なんだかんだの8時すぎ起床、そこからの朝食に出発準備のゴタゴタ、けっきょく家を出たのは10時台だった。

だがしかし、11時台にはすでに深大寺小学校前のバス停にいたのである。

近すぎて笑う。

調布駅からバスで7分。東京の東側からでも所要時間はせいぜい一時間ちょっとである。

バス停から深大寺に向かう道、この階段だけは抱っこ紐を使う必要があるが、あとは参道も含めずっとベビーカーでOKだった。

子連れでも、全然楽しめる。

なぜ、何年もの間、行けない場所だと思っていたんだろう…

参道までの道も、緑と水に洗われた、ひたすらに美しい景色が続く。

「雀のお宿」で念願の深大寺蕎麦を食べた

まず、食べる。

当然である。

多少は電車に揺られたものの、わりとついさっき朝食を食べた感が拭えない。しかし子連れ旅にモタモタは厳禁である。お昼時を過ぎると一気に飲食店は混み始め、当たり前だが混むと並んだり、食べ物が出てくるのが遅くなったりする。

待つ。

0歳4歳とともに行動する我々にとって、それほど恐ろしい行為もない。景色は変わり続け、気分は転換され続けなければならない。善と食は急げ。

ということで参道より手前、すぐに目に入った「雀のお宿」という素敵な建物の蕎麦屋さんに入る。

竹が伸びるお庭を囲むように幾つかの離れがあり、窓から深々とした緑を臨むすてき空間でお蕎麦をいただける。座敷とテーブル席も選ばせてくださり、ベビーカー持ちには有難い(テーブル席にした)

さらっと写真を載せてしまっていますがね、もう、心の中で打ち上げ花火がドカドカ上がる。

深大寺でお蕎麦、とうとう食べました。

感動する。念願の深大寺に、さして早起きもせずあっさりとやってきて、0歳4歳にも食べさせつつ、お蕎麦にありつけた。なんだかもう、とても凄い。もっと言葉を尽くして興奮を伝えたいけど食べるのに必死。もちろん美味しい。

卵焼きと地鶏くわ焼きも。

忙しなくではあるけれど、めちゃくちゃ美味しくいただいた。偏食長男も、生まれて初めてお蕎麦とか野菜の天ぷらを喜んで食べてくれた。深大寺はすごい。

参道での食べ歩きを満喫し、手作り市でお土産を買う

天気予報は外れ気味で、たまに雨が降りつつな曇り空だったけど、食べ歩きは満喫できた。

餡団子、みたらし団子、ソフトクリームを食べて、さらに大きな草餅を二つお土産に買う(帰ってすぐに食べたけどめちゃくちゃ美味しかった!)

お蕎麦屋さんはもちろん、お団子をはじめとする甘味類のお店も鈴なりで、とにかく歩いているだけで楽しい。

記念撮影の一枚を撮ってもらう。

昔懐かしいおもちゃが並ぶお土産屋、絵付体験的なことができる工房、どこも賑わっていて、人びとの楽しい気持ち、楽しみたいとはやる心で満ちていた。

湧水が流れ、水車が回る。水が好きな長男も飽きることなく眺めていた。

深い緑の中に浮かぶ、お蕎麦屋さんの灯りがほっとする美しさ。

上野や浅草のように騒がしくなくて、雑司ヶ谷の鬼子母神よりもっと自然が豊かな感じ、のどかで歴史があってお土産屋さんがいっぱいで、私の好みど真ん中な観光地…!

ちょうど開催されていた手作り市。前日思いつきの日帰り旅なのに、ラッキーすぎる。ぶらぶら眺めつつ歩き、木のおもちゃのお店で「カタカタ人形」というものを買った。

今日も長男が熱心にカタカタと人形を落とし、赤ちゃんはそれを熱心に眺めている。出かけた思い出が日常に溶けていく。お土産はだからいい。

肝心の深大寺にやっと辿り着いてお参りした

ここまで読んできた人は思うはずなんですね。

いつ深大寺に行くのか。

ずっと食べてばかり。そろそろ帰途に着かねば。その前にいくらなんでも本来の寺を詣でよう…ということでやっと執着爆発の食べ歩きルートから外れ、静かな境内に入る。

お参りをして、達磨のおみくじを引いて、また散歩しながらバス停への道を。

五円玉を投げて手を合わせる一瞬、心に浮かぶことは年々シンプルになり、スタートラインに足を揃えるような心地になる。

大事なものは見逃すくらい地味で、時に退屈にすら思え、いつもそこにあるもの。いつもそこにあると、思い込んでいるもの。

お寺の裏側の道。

湧いては流れる水。

参道の脇にある池。静かで透明なグリーンの濃淡に、吸い寄せられるように人々が立ち止まって眺めていた。

空気は清々しく、水と緑の匂いが立ち上り、まるで日光を歩いているみたい。完全に旅先の空気を、思い切り吸い込んで憧れの地を満喫した。

3時過ぎにはバスに乗り、調布駅直結のショッピングセンター「トリエ京王調布」で赤ちゃんの授乳とオムツ替え。ここのくまざわ書店は絵本がすごく充実していて、隣接した小さなキッズコーナーも有難い。

深大寺。全然近かったしまた来たい。

鬼太郎茶屋、日帰り温泉、神代植物公園…楽しい観光スポットはまだまだあるし、歩いてお蕎麦を食べるだけで幸せになれる東京のオアシスなのだ。

小さな「いつか」が今になる瞬間は、たまらないハイライトだったよ。

Sweet+++ tea time
ayako

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