朝起きたら体がむくんでいた。
何気ない出だしであるが、これは私にとって発見と驚きと成長のすべてが詰まった一文である。
何を隠そう、「むくみ」と「冷え性」というのは長年、二大「大人になってよく聞くけど全然意味わかんないもの」にランクインしていた。
食べすぎれば太る。太るのとむくみと何が違うのだろう?寒ければ手足は冷える。冬と冷え性の何が違うのだろう?
だが妊娠後期や出産後に恐ろしいほどのむくみを経験した私は、「ああ、これが巷で言うむくむってやつなんだ…」とまた一つ大人の階段を上った。足の指、手の指、ぼわっと膨らんでサンダルが履けなかった。
自転車に一度乗れるとずっと乗れるように、「むくんでいる」状態の感覚を一度つかんだ人間は強い。もう忘れない。無敵である。
満を持して、最初の一文に戻りたい。
朝起きたら身体がむくんでいた。
むくむと私はバナナを食べる。
納豆、アボカド、バナナは「なんとなく身体に良さそうな栄養詰まってそう」という意味で同じ系統の食べ物である。馬鹿の一つ覚えまるだしで、とにかく私はバナナを食べる。
食べながらふと「デトックス」という言葉が浮かんだ。こちらは「ヨガ」「スムージー」「ピラティス」などと同系統の単語である。なんとなく身体に良さそうな活動。続いて「アーユルヴェーダ」を思い出した。
インドのあれだ。
そんなワードを思い出したのも、最近買った「天然生活」復刊号の付録「小さな朝ごはんの本」にアーユルヴェーダのことが書かれていたからだろう。私は非常に影響を受けやすい性格である。
アーユルヴェーダとはインドで生まれた伝統医学である。哲学にも近い気がする。
ヴァータ(風)、ピッタ(火)、カパ(水)という三つのドーシャ(エネルギーみたいなもの)があるとされている。自分はどのドーシャが強いタイプかもわかるらしい。さっそくネットの無料診断をやってみた。
もちろん正確にはしかるべきサロンなどで診断されるものなのだろう。一日の中でも変わるというし。でもまあ、心理テスト感覚で質問に答えてみると…
私は「ヴァータ」が優勢らしい。
出典:アーユルヴェーダ体質診断
これがね、めっちゃ当たってる。衝撃的に当たってる。
細くて華奢。痩せ型、肩幅は狭く、腰も細い。
(そういう体型である)
好奇心が強く、想像力も豊か。物事に対する理解力は高く、記憶力も優れている。
(褒められると嬉しい)
緊張やストレスに対する耐性はあまりない。不安感や恐怖心が強く、心配性。物忘れも多く、飽きっぽい。物事を長続きさせるのが苦手な方である。
(=ayakoさん、である)
ヴァータ体質の方は食欲にムラがあり、食生活が不規則になりがちです。
(まったくお腹が空かない日と、夜中に異常に食べてしまう日がある)
もう、全部、私のことではないか…鷲鼻と歯並びを除けば完璧であるッ!
興奮していると、夫が冷ややかな目でこう言った。
「そういうのって、誰でも当てはまってるような気がするようにできてるんだよ」
そんな夫はカパであった。
出典:アーユルヴェーダ体質診断
一般に体格がよく、肩幅・腰も大きい。大柄、骨太。太りやすい体質で、体重も比較的重い。色白
(=夫である。体重も比較的重い)
髪は黒く艶がある。白髪にはなりにくい。目は大きく、まつげも長い。歯は大きく、歯並びも揃っている。体力や持久力に優れ、我慢強い。
(=夫である。マツエク後のような睫毛)
物静かで穏やかな性格。忍耐力があり、慈愛に満ちている。言動はゆっくりしている。物覚えは早くないが、一度覚えたものはなかなか忘れない。
(この忍耐力と慈愛で、我々の結婚生活は続いている。ありがとう)
カパの性質から何事も蓄積する性格もあり、お金を貯めるのが上手な面もある。
(何事も蓄積するだけあって、断捨離しない。片付けてほしい)
最後にこちらを。
カパ体質の方は太りやすい傾向が多いため、特に食事の量や内容には気をつけていく必要があります。
完全に夫へのメッセージである。
こうしてアーユルヴェーダに謎の感銘を受けた私は、さっそくAmazonで本を購入した。
『おうちで毒出し!アーユルヴェーダ』
朝昼晩の過ごし方、食事への姿勢、プチ断食、マッサージ、ヨーガ、スパイス、アロマテラピー…
めっちゃ良さそう。身体に良さそうなことが詰まっている。本が届いた日の夜、私が夢中で読みふけったことはいうまでもない。
まずは白湯の習慣を取り入れた。
アーユルヴェーダの白湯は、電気ケトルで沸かしたやつではダメである。火が必要なのだ。できれば土鍋や鉄瓶でできたやかんで沸かし、沸騰したらフタを開けて空気を取り入れる。
これで地水火風空の五つの要素が含まれた理想の白湯が完成する!
いよいよ、6年ほどまったく使っていなかったやかんの登場である。おしゃれさに惹かれて買ったけど、ティファールの電気ケトルにあっけなく敗北し、ただ王子のオモチャと化していたやかんが日の目をみる。
鉄でも土鍋でもなくホーローだけど(おしゃれさ重視だから)
とにかくこれでお湯を沸かそう!白湯を飲もう!朝から毒出しデトックスであるッ!
さて、私は早起きが苦手である。朝からオイルマッサージをしたりシャワーを浴びて髪を洗ったりする余裕は皆無である。夜のヨーガはできなくはないけど、ヨーガよりブログを書いたり刺繍したい。
ではアロマテラピーはどうだろう? 数年前に買い貯めたアロマオイルが変な匂いを発し出し、先日、処分のために一滴一滴をティッシュに落として牛乳パックにいれるという地獄のような作業をしたばかりである。酸化した変な臭いをかいだおかげで、手にブツブツもできた。さよならアロマ。
残りはスパイスしかない。だがスパイスを調合して肌にぬったり飲み物をつくるのは、なんだか面倒くさい気がする。スパイスカレーを作ろうと意気込んで揃えたスパイスの小瓶たちが、キッチンを無言で圧迫しているという事実がある。
こうして私のアーユルヴェーダは白湯を飲むだけとなった。
朝になるとやかんに1リットルの水を入れ、沸騰したらフタをあけて10分。この間にも化粧をしたり荒れ狂う王子の世話をしたりワタワタしている。夫が声を張り上げる。
「ayakoさん、アーユルヴェーダ沸いてるよッ!」
「アーユルヴェーダどうするの!?」
もはや「アーユルヴェーダ=やかん」である。
こうして我が家に謎の隠語をひとつ増やしただけで、私のアーユルヴェーダ熱は終息を迎えようとしている。
発端であったむくみはどこかに消えた。よかった。バナナはもう食べていない。やかんで湯を沸かすだけで、なんかすごい健康だな自分という気分に浸っている。
物忘れも多く、飽きっぽい。物事を長続きさせるのが苦手な方である。
ちなみに先日、貴重品をいれたリュックを丸ごと児童館のトイレに忘れてきたばかりである。
もちろんこのブログも、白湯を飲みながら書いている。なお、お昼はケンタッキーの予定である。
Sweet+++ tea time
ayako
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