「すっかり私もスマートな現代人だな…」
数年前のある日、私は薄くなった財布を見ながらひとり悦に入っていた。
貯まるかもわからないポイントカードやら割引券、クーポンなどをドサッと整理したのだ。だいたい紙のカードなどというアナログなもので財布をパンパンにするなど、かっこいいはずもない。
ポイント貯めるより、軽いお財布と早いお会計。これに限るね。
「Tポイントカードはお持ちですか?」
毎回呪文のように唱えられるファミリーマートで、以来私は何も出さないで過ごしてきた。夫も出さない。数百円(もちろん電子マネーで払う)の買い物にいちいちポイントをつけるのは億劫だと、私たちは思っていた。
だが最近、机の奥にしまっていたらしいTポイントカードが出てきた。
「ほう…」
あれだけコンビニの定型句になびかないと決め込んでいた私であるが、さりげなく財布にしまった。
翌週、TSUTAYAで本を買おうとした私は、セルフレジの案内に促されるままにTポイントカードを入れてみた。するとどうだろう。
300円分のポイントが溜まっているではないかッ!
3000円の洋書が2700円になった。私は控えめに言って、めちゃくちゃに歓喜していた。
「すごいよ!Tポイントすごいよッ!」
夫も興奮して頷いていた。
そんな私も、くすりの福太郎のポイントだけには手をだすまいと思っていた。昔に作ったカードはあったものの、長いこと財布にも入れていない。私はくすりの福太郎の「ポイント○倍デー」を敵視してすらいた。なぜならその日はものすごい行列になるからである。
私はレジに並んで待つのがどうも苦手だ。手持ち無沙汰でソワソワしてしまう。だからここ一年はスーパーにも滅多に行かず、食料品も日用品も、基本ネットスーパーとアマゾンで注文している。
(ポイントなんていらないから、貯めてない人専用のレジですぐにお会計ができればいいのに…)
くすりの福太郎の長蛇の列を横目に、そんなことすら思っていた。
だが最近、本棚を整理していたら、昔の財布からくすりの福太郎のポイントカードが出てきた。
「ほう…」
あれだけ「ポイント○倍デー」を敵視していた私であるが、さりげなくカードを財布にしまった。
翌週、たまたま寄ったくすりの福太郎のレジで、促されるままに数年ぶりのカードを出してみた。するとどうであろう。
500円の割引券がもらえたではないかッ!
どうやら以前使っていた頃のポイントが、ちょうど今のお会計で500円分に達したらしい。私は控えめに言って、めちゃくちゃ歓喜していた。
「すごいよ!くすふくのポイントすごいよッ!」
夫も興奮して頷いていた。
こうして私の財布は、徐々にボリュームを増してきた。
しかし思い返すと、私は紙のポイントカードをまったく使ってなかったわけではない。この数年も熱心にポイントを集めていたカードが2枚だけあった。それは近所のカレー屋さんとケーキ屋さんのポイントカードである。
Tポイントカードやくすりの福太郎のカードは頑なに無視を決め込んでいたというのに、いったい何が違うというんだろう。
個人のお店の、厚紙でできた素朴なポイントカードを見ながら、私は気付いた。
それらは数百円ごとにリアルにスタンプが押されていく、旧式タイプのポイントカードだったのである。スタンプが全部が埋まると、ケーキがひとつもらえる。カレーのランチが無料になる。そして新しいカードがもらえる。あの分かりやすさ。貯まってる感がビシビシと伝わって来る喜びである!
「やっぱポイントはこうじゃなくちゃねぇ」
インクの滲むスタンプに相好を崩した私は、「スマートな現代人」から最も遠い人種だった。
そうである。
スタンプを押してもらう瞬間って、最高にココロオドルよね。
Sweet+++ tea time
ayako
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