映画デートは良くない、という話を聞いたことがある。
「良くない」というより「もったいない」という方が正しいかもしれない。要は2〜3時間をただ画面を見て過ごすわけであるから、距離が縮まらないしデートとしてはイマイチという話である。
さて、我々夫婦は映画デートが多い。これはひとえに、お互いに共通の趣味がないからである。
もともと映画は嫌いではないのだが、自分から観ようとは思わない。なぜならめんどくさいからだ。
第一長い。最近の映画だと3時間近いものがざらにある。その間ずっと座って画面を見ているというのは、常にソワソワしている私には修行である。
第二に覚えられない。とりわけ欧米人の顔はみんな同じに見えてしまうため、終盤になってようやく、あの人とこの人は違う人だったんだな、と自分の中で登場人物が増えたりする。
第三に難しい。映画はドラマと違って、短い時間で登場人物の関係性から話の状況、展開まで全てを理解しなければならない。なんか意味わかんない話だったなぁと思っていたら、最後のどんでん返しを1ミリも理解していなかったということが多々ある。
それでも一緒に楽しめる趣味を特段持たない我々は、わりと頻繁に映画に行く。
休日になると「映画でも観に行くかぁ」と夫が言い、面白そうな映画を調べて予約をしてくれる。しかし私は行く直前までなんとなくめんどくさい気持ちで乗り気ではない。
だがどうだろう、いざ映画館に入ると、無表情で座っている夫のとなりで喜怒哀楽をあらわにし、感動で鼻を赤くして大泣きしているのは私である。観終わった夜はブログに熱い感想を書き、にわか映画好きに様変わりしているのも私である。
映画を観終わった後、映画館のおしゃれなレストランで感想を言い合ったり、あのシーンがこうだったねああだったねと語り合うのは、なんとも楽しい。
忘れられない映画のシーンや言葉は無数にきらめき、外国の見たことのない街並みや美しいレトロなファッションはあざやかな色で記憶に残っている。まるで旅行をしたかのように、すべてを忘れて別世界の中に没頭できるって、たまらなくいい。
この4年で観てきた映画たちは二人の間で何度も話題にのぼり、きっと知らないうちに生活の一部になっている。そのどれもが、夫と一緒にいなかったら出会わなかったかもしれない作品たちだ。
だから思っていた。映画デートも、あながち悪くないよねと。むしろめちゃくちゃ素敵だよねと。
話は突然変わるようであるが、先日、私たち夫婦と共通の友人二名の合計四人で焼肉に行った。たまたま映画の話になった。
「私たち、けっこう映画もよく行くんだよ〜」
「そういえばそうだよね」と、このブログを読んでくれている女友達がニコニコ顔で頷く。
男友達はジブリが大好きらしく、「俺ラピュタがめちゃくちゃ好きなんだよね〜もう何度も観たわ!」
それを聞いた夫はこう言った。
「ラピュタって、上空の話だよね」
「・・・・・」
「空の上のほうで起こる話だよね」
私は赤面しつつ「そういえば『コクリコ坂』も観たよねぇ」と話題を変えようとした。すると夫は得意げに付け足してきた。
「あれは、地上の話だね」
紅の豚についてはこうである。
「ブタの話だよ」
男友達は呆れて言った。
「おまえら1,800円がもったいないよ」
外国人の顔が覚えられない女に、ラピュタを「上空の話」と満足げに解説する男。
映画デートが似合う二人になる日は、来るのだろうか…
Sweet+++ tea time
ayako
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