動画配信にワクワクしたかった人生

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現代人は待てないという。猛スピードで便利になる世の中で、「待つ」ということへの耐性はますます下がり、せっかちになる。

ニュースも新聞で与えられるのではなく、ネットで気になるのだけ見る。面白いテレビ番組の放送を待つより、ネットで見たい動画を好きなときに見る。

知り合いの美容師さんの息子も、そういう理由でテレビよりユーチューブという世代らしい。

だが私はテレビはおろかユーチューブも見れない、どころか数分の動画だって我慢できない。とんでもないせっかち女なのである。

*・*・*

 

家族や友達からLINEで面白いネット記事が送られてきたとする。私はタップする。iPhoneで文字を読むのが大好きなのだ。

だがそこに「▶︎」マークがあったらどうであろう。動画の再生ボタンである。私はまずスルーする。十中八九触らない。たとえ一分でも面白いかわからないものをじっと見るのが面倒くさいから。心が狭すぎる。

文章と写真でザーッと読むときには自分のスピードで進められるが、動画はじっと待たなきゃいけない。苦痛である。認めたくないが、これが自分の本性なのである。

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ツイッターのタイムラインを眺めていると、みんなHuluとかNetflixで面白いドラマや映画を観て夢中になったり感動したりしている。ナントカのシーズン5が公開になった!やった!あの結末がどうのこうの。盛り上がっている。うらやましい。

Amazon Primeにも確実に評判がいいドラマや映画がずらりと並んでいる。古今東西の名作が「いつでもどうぞ」と健気に再生を待っている。

だが見ない。時間ができたらあれもこれも見よう!あんなに夢想していたのに、いざ暇になっても全然見ない。「▶︎」マークをタップしてじっと眺めることがどうしてもできない。

来世こそ、動画配信にワクワクできる人生を送りたい。

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一方の夫は映像が大好きである。テレビもよく見るし、ソファに寝転がってしょっちゅうユーチューブを見ている。休日は映画に行きたがり、面白そうな上映作品を探して予約までしてくれる。

だが映画デートが決まったあとの私の心中はこうである。

今から映画か…二時間半か…

出発前の私はめんどくささがMAXに達している。その間に刺繍したりブログ書いたりできるのに、とか思っている。

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同じデートでも散歩したりカフェでおしゃべりしてる方がいい。会話もしないでじっと同じ場所に座って同じ画面を見るというがとんでもなく苦行に感じてしまうのだ。

だが観終えるとどうだろう。

映画館の中で、たいてい号泣している。感動しすぎて、一週間は映画の世界から戻ってこれない。忘れられない。夢にまで見る。

「ayakoさんは観る前は渋々なのに、すごい感動しちゃうからねぇ」

夫は私が動画めんどくさがり体質なのを、それでいて感動体質なのをよく理解している。

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先日、夫から動画が送られてきた。職場からではない、同じリビングの、すぐとなりのソファに座っている。

私はPCの前でブーっと震えたiPhoneを開くと、夫からのLINE画面に浮かぶ「▶︎」マークを苦い顔で眺めた。

ギョ、動画だ…

アニメ「クレヨンしんちゃん」のワンシーンらしい。めんどうだ。もし離れた場所にいたら、「あとで観よう」とか言い訳して間違いなく再生しない。だが夫は数歩となりにいる。同じ部屋のソファで、私が「▶︎」マークをタップするかどうか、虎視眈々と見つめている。

私は監視員のもと、しぶしぶクレヨンしんちゃんの動画を再生した。

夫は満足げに同じ音を聞いている。得意げに、自分が送った動画を見る私の表情を確認している。

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そうである。

2018年、東京都内の古マンションにて、非効率きわまりない光景が繰り広げられていた。

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Sweet+++ tea time
ayako

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