それはちょっとした希望と言い換えてもいい

煮りんごを作った。

と書くとなんていうことのないことのようであるが、りんご2玉の歴史は長かった。

そもそもの始まりは「美味しいクッキーが食べたい」であった。とある調子のよい日、私はバタークッキーを焼こうと思いつき、無塩バター100gを常温に戻すため冷蔵庫から出した。

バターは2日間ほどキッチンに出ていたが、やがて冷蔵庫へと戻って行った。焼く気力及び時間がなかったためである。

冷蔵庫の扉を開けるたびにクッキーになり損ねた無塩バター100gと目が合う。結局クッキーは買ってしまった。「そうだ、りんごケーキを焼こう!」と思いつく。ちょうどバター100gが使えるし、ケーキが食べたい気分。

こうして冒頭のりんご2玉を買ってきた。りんごは3週間ちょっと冷蔵庫にあり続けた。私はその間、親子で風邪のエンドレスループの渦中にいた。冷蔵庫の扉を開けるたびにりんご2玉と目が合い続ける。

途中、近所の友人がりんごを2玉くれた。冷蔵庫のりんごは合計4玉になった。私は慌ててもらったりんごをすぐに剥いて食べた。瞬発力が大事である。

さらに数日後、夫が職場からりんごを1玉もらってきた。りんごと幸福は重なるものだ。またも慌てて剥いて食べた。高熱の中で食べる紅玉の美味しさは格別。

さて先日、冷蔵庫にありつつづけた最初のりんご2玉と、とうとう対峙した。疲れ→風邪→疲れ→風邪の無限ループの途中で、今なら行けそうという瞬間が訪れたのだ。

ケーキを焼く余裕はないが、生で食べるには時が立ちすぎている。こうして「煮りんごを作る」という解が導き出された。

晩ごはんを作る傍らりんごの皮を剥いてくし切りにし、琺瑯の鍋に入れて砂糖大さじ2を振っておく。食後、洗い物をする傍ら鍋に火にかけ、りんごを煮る。たまにかき混ぜるだけでいい。

ジャムよりずっと手軽に、美味しい秋のスイーツが完成。大満足!

翌朝、さっそく煮りんごをヨーグルトにのせて食べる。贅沢気分。夫も次男も喜んで食べている。

いろいろあったけど、りんご2玉を無事にいただけてよかったなぁ…風邪もだいぶ治ってきたし…

算数のような日々である。さて、いま我が家の冷蔵庫には何が残っているでしょう?

答え:無塩バター100g

りんごに気を取られてしまうと間違える。長々とした文章題とはそういうものである。

算数の問題も現実の問題も、スカッとシンプルに「0」が答えになることはなかなかない。バター、どうしようか。

でも冷蔵庫に何かが残っているということは、未来への約束があるということ。それはちょっとした希望と言い換えてもいい。クッキーかパウンドケーキか、はたまたクランブルマフィンか。密かにヴィクトリアケーキも作ってみたい。

まあ現実はまだ風邪が治りきらず、日常生活で精一杯な日々だけど、小さな希望はいくら持っておいても悪くない。賞味期限さえ許すならば。

バター100g分の約束と、冷蔵庫の扉を開けるたびに目配せし合っている。

Sweet+++ tea time
ayako

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