谷川俊太郎『ひとり暮らし』と夏から秋のごはん日記

夏が、とうとう終わった。

今思えば「すべては暑さのせい」と日々の怠惰と無力の全責任を押し付けようとも黙って受け止めてくれた忍耐強い季節、夏よ。

秋、私は衝撃を受けている。こんなにも涼しくて空気がカラッとしてて空は高いのに、正真正銘一年で最も過ごしやすい稀有な季節に違いないのに、別に全然めちゃくちゃ余裕で疲れている。

冷凍食品を詰め込むだけの弁当作り、せいぜい徒歩10分の送り迎え、遊んでるのを見守ってるだけの園庭開放もしくは公園。何が私のエネルギーを吸い取っているのか。寝落ちもしくは虚無により、ブログを書く気力なく10月も終わろうとしている。

だが、私は作っている。むしろ作ってしか、いない。

りんごのヨーグルトケーキと紅茶のパウンドケーキで朝食にした日。ああ貴族。それもこれも、私専属の優秀なコック(私)のおかげである。

*・*・*

 

谷川俊太郎さんの『ひとり暮らし』というエッセイ集の中に、とても好きな食べ物の描写がある。

今朝はクロワッサンと、にんじんとピーマンとレタスのサラダと、なんとかウルストみたいなソーセージ半本と、それに意外な組み合わせだがサツマ芋をふかしたのを薄く切ってバターで焦げ目をつけたものを食べ、ココアを飲んだ。

想像して、なんだかすごく美味しそうだなぁと思う。食べ物の描写を読むのが好きなのだ。チグハグな、その日のありあわせと自分の好みとが組み合わさった偶然の食卓。まったく同じメニューを食べたことはなくても、うんうんでもこんな感じの朝食ってあるよね、という豊かな既視感に満ちている。

昼食の描写も続く。前日の外食で食べきれず持ち帰った韓国風塩辛に、幾つかのおかずを足して食べたらしい。そんな食事をこう評価する。

私の食生活はゆきあたりばったりである。ふつうの人の食生活もほとんどはゆきあたりばったりだろうと思う。そうでなければおかしいと思う。毎日婦人雑誌のグラビアにのっているような器と盛り付けで、婦人雑誌のグラビアにのっているような御馳走を食べていたら、なんだか日常というものがどこかへ逃げ出していって、メロドラマ映画を生きなければならなくなるような気がして肩が凝る。

この一節も、とても好き。ああ、日々の食卓って、日々の部屋って、すなわち生活というのは、ゆきあたりばったりで当然なのだ。

いつも整っているわけではない。謎の組み合わせ、とっ散らかってたり、たまにちゃんとしてたり、すべてのものと心は動き続けているように、部屋も食卓も時によっていろんな表情がある。ゆきあたりばったりでも、回していく日常という車輪よ。

何を作って食べたかというのは、読むのも書くのも大好きだ。それは私にとって、どんなにヘトヘトでも、回した車輪のなかで見えた大事な景色なのだ。

というわけで、最後に近況ごはん日記を載せてみたい。

もちろん写真に撮る余裕などない日がほとんどなので、全てはこれでもちょっと私的「メロドラマ映画」な瞬間たちである。

*・*・*

 

具だくさんお味噌汁の彩りが綺麗だった日(パプリカが入っている!)

残り物を丁寧に盛り付けてみた日。この夏はとうもろこしご飯をたくさん食べた。

トマトの炊き込みご飯を作ってみた日。めちゃくちゃ美味しかったし夫も感激していた。大好きな野菜の本のレシピ。

ネットの何処かで見つけたレシピで塩レモン唐揚げ。二回作った。もっと調味料を減らせる気がするので試行錯誤してみたい。シンプルで少ない調味料で作るのが好きです。

生まれて初めて枝豆を茹でた夏2023。かわいいキュウリの形が愛おしい。

ウー・ウェンさんの大好きな本のおかげで、魚料理のハードルが一気に下がった。蒸し魚、よく作っている。

入りきらないほどのキャベツと鶏肉のブレゼ。敬愛するタサン志麻さんのレシピです(「à table SHIMA」は必ず買って読み込んでいる。全てが好みすぎて秋号が出るのを心待ちにしている!)

同じ写真に見えるようで違う、その時々の名もなきオーブン野菜グリル。チーズをかけたり生クリームかけたり、塩胡椒だけでも、とにかく美味しい。

茄子の唐揚げ。1歳次男が食べる唯一の茄子料理。

豚こま肉のカリカリ甘味噌絡め

ブリの湯煮 梅とカブのソース

醤油だけ唐揚げ

本屋さんで見つけた長谷川あかりさんの料理本にどハマりし、毎日のように作っている。

豚肉と小松菜のビネガークリーム煮

ブイヤベースごはん

洋食メニューも素敵なのがいっぱい。シンプル簡単なのにどこか新しい味わいに感動する日々。

大好きなししゃも。

私的最高のお昼ごはん。平日は焼くだけのお魚と具沢山お味噌汁が多い。

と健康に見せかけて……

鶏ひき肉でナゲットを作り、

メークインでフライドポテトを作ってみた。どちらもタサン志麻さんのレシピです。兄弟とも歓喜して一瞬で消えた。

お菓子作り熱も冷めやらず、りんごのヨーグルトケーキを2本焼く(『バスクの修道女 日々の献立』レシピ)。爽やかな酸味ですごく美味しかった……また作る。

前夜に焼いた紅茶のキャトルキャールがあれば、

いつもの朝が最高になる。

明日の朝はりんごのガトーが待っている。

Sweet+++ tea time

ayako

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