学生時代、熱に浮かされたようにひたすらロシア語の勉強ばかりしていた私であるが、最初に知ったロシア語のことわざはこれだった。
Кашу маслом не испортишь.(カーシュ マースラム ニ イスポルチッシ)
バターでお粥がダメになることはない。良いものは多ければ多いほどいい!
そんな感じの意味だったと思うけど問題はむしろ…
お粥にバターとは。
大好きな世界の朝食本、ロシアのページを開いてみる。ノスタルジックな花柄テーブルクロスを背景に、プレートの下半分が気になるカーシャ(お粥)
お粥といっても素材は米ではなく蕎麦が基本。水や牛乳で煮込み、たっぷりのバターをのせて熱々をいただく。
蕎麦といえばヘルシーな食べ物の代表格というイメージなのに、牛乳、バターとの共演。そのうえバターは多ければ多いほどいい。嘘だろう。
素朴でしんみりな弾き語りシンガーソングライターが突然バンドを組み始めた、それもヘビメタ。首は振れば振るほどいいらしい。もう衝撃としか言いようがない。
学生時代、このことわざを習ったときも、ロシア人の先生はカーシャについていろいろ説明していたように思う。外国語を学ぶということは、異文化の扉をノックすること。切ない系シンガーソングライターが、実はヘビメタバンドのボーカルも兼任していたと知ることである。
しかし当時の私は料理より言語。食べてみたいとか見てみたいという欲求も不思議と湧かなかったのだ…
十年後、ロシアの蕎麦の実を取り寄せカーシャを煮る朝が来るとは
これだからスープと人生は味わい深い。最初の一口ではわからないのだ。刺激的でもあっという間に忘れる味があれば、奥深い滋味が舌に残り、繰り返し反芻する一皿になったりもする。
ロシア語はだいぶ忘れたけど、ロシア料理への愛は深まるばかり。今はむしろ、言語より食べ物な私である。
そして時代は令和。2021年、ロシアのグレーチカ(蕎麦の実)はAmazonで簡単にポチッとできて、素晴らしいレシピはインターネットにあふれている。
▽蕎麦の実▽
▽大好きなyasiaさんレシピ▽
詳しいレシピはリンクを見ていただくとして、今日も今日とて楽しかった料理日記を書いてみよう〜!
蕎麦の実を乾煎りする
1カップ分の蕎麦の実を注ぐ。
「乾煎りする」という行為がよくわからなくて不安しかないのだが、とにかくそのまま火にかける。
パチパチと弾けるような音、続いてもう比喩でなく失神しそうなくらい香ばしい蕎麦の香り。狭いキッチンで、五感を四方八方から殴られる。やられっぱなしの弱きボクサーである私は、この時点で確信する。
これ絶対に大好きなやつだわ…
水で煮る
水(2.5カップ)と塩(小1弱)を入れて蓋をして煮る、というか炊くのか。弱火で水分がなくなるまで。
牛乳も足して煮る
思いのほかすぐに水分がなくなったのと、朝食なので牛乳で煮たカーシャの方がいいかもと思い、牛乳もてきとうにプラスした。
あっという間に完成
もうね、とんでもなく香ばしくて良い蕎麦の香りがキッチン、いや家中に満ちている(狭いせいもある)
もともと蕎麦が好きだけど、形は麺だと思い込んできた。いやはや彼が最も力を発揮できるのは、お粥だったのかもしれない…
たっぷりバターをのせて、ロシアの朝食カーシャを満喫したよ
細長い形でザルにのせられるあの蕎麦を、実のままエレガントな器に盛って、大きなバターの固まりまで載せる。未知の世界。
組み合わせがよくわからないけど、アイスカフェオレにバナナもつけた。
熱で溶け出すバターを惜しむように混ぜながら、緊張の一口。
歴史は今、塗り替えられた。
こんなにも美味しい「蕎麦」があったのか…
感想を真面目に書こうとすればするほど「香ばしい」という形容詞一択になってしまう。だがとにかく美味しい。香ばしくて美味しい。
牛乳に浸してみた
朝食っぽいかなと思い、オートミール的発想で牛乳を入れてみたりもした。それもよい。
でもやっぱり熱々のお粥にバターは破壊力が抜群だし、バターは無塩じゃなくてふつうに塩分があるやつがおすすめ。そして多ければ多いほどいい、と言いたくなるくらいよく合う。もちろん、ことわざと違って現実は、健康と体重との兼ね合いがあるけどね。
番外編:ピロシキの具にしたりオムライス風にしたり
さてこの蕎麦の実、ふつうにごはん的な食べ方もする。
ひき肉と野菜と炒めるチャーハン的な「肉入りカーシャ」である。玉ねぎにんじん豚ひき肉を炒めたところに、さっき炊いたカーシャを投入する。
スパイスはいつだってこちらから攻めるスタンス。塩胡椒につづき、ナツメグ、オールスパイス、パプリカ。
クローブも少々。
もちろんなければ塩胡椒だけでもよい。ただしスパイスがあるとめちゃくちゃ美味しくなる。彼らは魔法の小瓶である。
ピロシキの具にしたり
肉入りカーシャのピロシキ。
見切れてるボルシチは今回、楽天で取り寄せた生のビーツで、牛肉から出汁を取ってまじめに作った。その日記も書きたい。
オムライスにしたり
包むのは面倒なので、ふわふわ卵を上からかけた。牛乳と卵で作るスクランブルエッグです。
ああ…幸せは形のないものだというのは、響きはいいけど偽りである。幸せはオムライスの形をしている。
とびきり美味しかった!
まとめ
使ってみたい食材が列をなすキッチン脇。
蕎麦の実、まだたっぷりあるので、ちょっとずつカーシャにして食べるのが楽しみ…(炒めたあと冷凍してもOKでした!)
そう、私がカーシャにいたく感動している傍で、初回だけ付き合った夫はこうのたまった。
「蕎麦はふつうに麺で食べたい」
こうして今日もまた、私は元気よく孤独のグルメな道をゆくのである…
Sweet+++ tea time
ayako
今日のおすすめ
素敵なカーシャレシピ
私のバイブル朝食本
この中のカーシャレシピもいい!牛乳と合わせて煮るタイプ。何より写真が最高にかわいくて永遠に見てられる本です。
▽蕎麦の実▽
私が買った緑のパッケージのはもう販売されていなかった。これは世界の朝食本に載ってるのと似ている、黄色いパッケージのグレーチカ(蕎麦の実)!
こちらもどうぞ