自己啓発書の落とし穴

f:id:sweeteatime:20170521194657j:plain

自己啓発書というものがある。

私もときどき読む。だらけ始めた自分を一喝するために。

何を隠そう、影響を受けやすい性格の私は、自己啓発書の効果が出やすいタイプなのだ。読んだあとはリアルに生まれ変わる。本屋で一冊購入すると、帰宅後には別人になっているというスピード感だ。

突然、目覚めたようにたまっていた洗い物を始め、ポジティブ発言が激増し、異常な早寝早起きに一変する。(自己啓発書では基本的に早寝早起きが推奨されると相場が決まっている)

f:id:sweeteatime:20170521202415j:plain

f:id:sweeteatime:20170520124813j:plain

何でも即返信するようになるし、朝5時に起きて刺繍を始め、iPhoneを見えないところにしまい、15分おきに休憩をとったかと思えば立ってブログを書き始めたり、休憩にはナッツを食べ、散らかっていた机の上はPCのみとなる。とにかくありとあらゆる説を取り入れる。

「すごい!昨日の私と、全然違う!」

その生産性の高さに感激し、アドレナリンが大量発生している。

「この本は凄いよ」

ソファであざらしスタイルになっている夫にも、得意げに報告する。

*・*・*

 

だが言うまでもなく、この効果は一週間ももたない。

数日後には夜更かしをし始め、返信が滞り、iPhoneを机に置いたまま作業するようになり、もちろん洗い物は溜まっている。「ま、のんびりいこうよね〜」という感じになる。一時はバイブルだった自己啓発書が、BOOKOFF行きの紙袋に入る。

意思の弱い人間にとって、自己啓発書はしょせん栄養ドリンクでしかないのだ。

*・*・*

 

ビジネス書とか自己啓発書の類を、こうして買ってはやる気になったと錯覚し、やがて飽きる。気づけば似たような本をまた手に取っている。「できないヤツ」の典型であるが、おそらく、私を含む多くの人はこんな感じであろう。よく知られた「自己啓発書の落とし穴」である。

f:id:sweeteatime:20170521200753j:plain

しかし世の中には、自己啓発書に一切の影響を受けない人がいる。自分の人生哲学と生活に信念を持ち、何にも揺るがされない軸を持って生きる人。

何を隠そう、夫である。

*・*・*

 

例えば、メンタリスト DaiGo氏の『自分を操る超集中力』

夫はこの本を手にして言った。

「まず、これを読み上げる集中力がないんだよなぁ…」

実際、読み終える気配はまったくなく、一年が経とうとしている。もちろん一切の影響も受けていない。

*・*・*

 

例えば、『すぐやる!「行動力」を高める"科学的な"方法』

夫はこの本を手にして言った。

「まず、この本を"すぐ読む"ことができないんだよなぁ」

実際、読み終える気配はまったくなく、半年が経とうとしている。もちろん一切の影響も受けていない。

いずれの本も、私は一気に読み上げ、異常な影響を受けて数日間だけ生まれ変わった一冊だ。(ちなみに買ってきたのは夫である)

*・*・*

 

『入社一年目ロジカルシンキングの教科書』は、社会人8年目の今もなお読み途中のようだし、『頭がいい人の仕事が速くなる技術』も38ページ目に付箋が入ったまま忘却の彼方である。仕事の速さは知らないが、毎日元気に帰ってくる。

影響を受けては飽きる私より、はるかにエコである。きっと生涯にわたって、夫はなにひとつ影響をうけないであろう。自己啓発とは無縁な、のんびりしろくまスタイルである。

*・*・*

 

そんな夫であるが、先だって、帰宅するやいなや興奮気味にこう言ってきた。

「ayakoさん、すごい本があるらしい!」

「そうなの?」

夫が本の話をするのは珍しいな〜と思いながら聞いていた。

「マーク・ザッカーバーグもビル・ゲイツも、ベタ褒めしてるんだよッ!オバマもなんかとにかく凄い本だって言ってるんだ…」

f:id:sweeteatime:20170521203328j:plain

田中も吉田もベタ褒めしてるんだよッ!そんなテンションで世界的著名人の名前を挙げ出した夫。私が呆然としていると、

「世界48か国で200万部以上売れてるらしい。ほら見てよ、『人類の未来が気になっているすべての人に薦めたい』ってビルゲイツも言ってるんだ…」

どうやら夫も、「人類の未来が気になっているすべての人」のうちの一人らしい。『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』という分厚い上下巻を、その日のうちにアマゾンで注文していた。

f:id:sweeteatime:20170521201544j:plain

さて、翌日。

夫は帰宅するやいなや本を開封し、食事を終えると厳かな雰囲気で開いた。分厚いハードカバーの本に綴られる、文字通りのサピエンス全史。一ページ目で、夫は眠った。

ホモサピエンスすら出現しない、地球誕生の瞬間で眠りについた。

お腹の上、寝息と合わせて上下している本のタイトルを見る。

『サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福』

 

サピエンス全史を知らなくても、十分に幸福な寝顔であった。

f:id:sweeteatime:20170521203750j:plain

かっこよく言えば、そうなのか…?

f:id:sweeteatime:20161011113545j:plain:w220

Sweet+++ tea time
ayako

次回予告

明日こそ、犬吠埼の灯台と可愛すぎた白いポストについて書く予定です。お楽しみに〜!

こちらもどうぞ

sweeteatime.hatenablog.com

sweeteatime.hatenablog.com