小学三、四年の頃であろうか、私は手品に夢中だった。田舎のショッピングモールにきたマジックショーに、瞬く間に影響を受けたのだ。単純である。
図書館で手品の本を借りてきては(今ならYouTubeですね)、家で熱心に練習していた。学校で各々出し物をするイベントがあったときも、もちろん友達と組んで手品を披露した。後日、クラスの男子に手品のタネを暴かれ家で密かに泣いたことまで覚えている(平和だなあ)
余談だが私は小学生の頃、宿題以外の勉強など全くしたことがなく(もちろん塾とかもない)、学校が終わった後は手芸やら手品やらひたすら何かに熱中していた。
手品師になりたいから手品の習い事に連れて行ってくれと母にせがみ、分厚い電話帳(その存在が懐かしい)で調べてもらった。それらしき学校はあったけどちょっと遠いからと断られたが、調べてくれるだけ凄いことである。
さて、手品師にはなれなかった私であるが、先日ふと思った。
これはもう、ほとんど手品ではないか…?
何の話をしているのかといえば、料理である。
冷蔵庫に長いこと眠っていた瀕死の野菜で、
とんでもないごちそうを産み出してしまった。ちょっと待って、ここはパリの小洒落たレストランなの…?
(相変わらずの妄想力で失礼します)
指先から真紅のバラが咲き、ハットから白い鳩が飛び立ってゆくのが見えた。そんな驚きのおいしさ。下手ながらもダラダラと続けていれば、こうも料理の腕は上がるものなのかッ!
(相変わらずの自画自賛で失礼します)
野菜を長いこと眠らせ瀕死にしたのも私であるが、よみがえらせたのも私。美味しすぎると感嘆しておかわりするのも私。
自分の、自分による、自分のための簡単料理日記を綴ってみたい!
とんでもなく美味だったある日の名もなき煮込み料理の作り方
01。鶏肉を焼く
え?肉?野菜を生まれ変わらせたんじゃないの?!
すでに話が違うと思われたかもしれないが、ごちそうに肉は不可欠である。野菜だけでは主役になれないが、そこに肉を投入すれば晩ごはんにしろ昼ごはんにしろ一品で完結する。そして今、完結は必須である。
味付けはこれだけ。
クレイジーソルトとブラックペッパー。いろんなハーブやスパイスを自分で調合しなくても、この二つをひたすら振りかければよい。
ストウブ(厚手の無水鍋)に油を敷いて中火で焼く。焼き色がついたら弱火にして蓋をして少々蒸すとよい(ちなみに鶏肉は400グラムくらい)
「なんか美味しそうな匂いがする…」
このあたりで夫が挙動不審になってくる。
02。肉を取り出し、残り物野菜を鍋に詰め込む
片付けたい野菜たちを適当に切る。ちなみにこの日のメンバーは、
ズッキーニ(1本)、玉ねぎ(1こ)、じゃがいも(2こ)、しいたけ(3こ)、にんじん(半分)、キャベツ(1/8くらい)
お肉を取り出した鍋に野菜を全て詰め込む。クレイジーソルトとブラックペッパーをちょこちょこ、でもしっかり振りかけながら。
03。鶏肉を戻し入れる
一番上に、最初に焼いた鶏肉を戻し入れる。
04。中火→弱火で蒸し煮する
いつものもとおり、蓋を閉めて中火にかけ、沸騰する音が聞こえたら弱火にして蒸し焼き(蒸し煮?)にする。
スパイシーな肉料理の香りを嗅ぎつけて、夫がキッチンを右往左往し始める。
根菜に火が通り、全体的にくったりいい感じになったらおしまい!
05。最後にオリーブオイルをまわしがける
ここでおしゃれなパッケージの上質なオリーブオイルを出したいが、例のごとく生協である。
こんな感じで完成〜!
タネも仕掛けもある、手品のような美味しいひと皿
うまいこと天然ハーブが調合された岩塩クレイジーソルトに、なんでも美味しくしてくれる無水鍋ストウブ。
優秀なふたりのコンビネーションなのだから当然美味しくなるに決まっている。タネも仕掛けも全然ある。しかし手品はそれゆえに素晴らしいのだ。
一口食べて、感嘆する。
あり合わせで、残り物で、こんなにも美味しいものが産まれるなんて!ストウブのおかげで、野菜や肉の旨味が凝縮され、スパイシーな中にコクがある。鶏肉はほろほろに柔らかく、じゃがいもも煮崩れていないのにしっかり火が通って味が染みている。
ただしく材料を揃え、レシピを見て作った料理が美味しい時も、もちろん嬉しい。それはちゃんと勉強して受けたテストの点がいい感じに似ている。
しかし手品的料理には驚きがある。
「あれ、もうなくなったの?」
夫もこの名もなき料理の存在をやたらと気にしていた。あまりに美味しいので、私がケチケチとしか夜ご飯に出さず昼に独り占めしていることを知るや否や、
「許されないよッ!」
扱いが難しそうだと苦手意識を持っている、ずっしり重いストウブの鍋を、いそいそと自ら火にかけていた。
冷蔵庫の残り野菜でまた作ろう。でもこの日の組み合わせが神だったのかもわからない。わからなくても料理は楽しい。皆さんもぜひお試しあれ。
Sweet+++ tea time
ayako
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