退屈な時間は生きていくのに必要なもの。『北欧で見つけた 気持ちが軽くなる暮らし』

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この四連休はよくピクニックをした。

涼しくなったし、熱い紅茶を水筒に入れて、ちょっと広い公園の芝生にシートを敷き、サンドイッチとかパンを食べる。

いまさらなんの解説かと言われそうだが、一般にこれを「ピクニック」と呼ぶ。

だが実行するといつも思うのだけど、そしてやってみた人は誰しも納得してくれると思うんだけど、

めちゃくちゃ暇なんですね。

いざ座ったら、意外ともうやることがない。

延々と食べるのも胃が苦しいし、いつも一緒にいるメンバーだからあらためて話が盛り上がるということもない。青空の下で読書とか素敵なんだけど、二歳児と一緒に座っているのでそれもない。

ただぼうっとしている。

三人でひたすらぼうっとする。なんとなく周りの人とか犬とか、たまに通る電車や車、風に揺れる木々などを眺め、これといった会話もなくじっとしている。

ピクニック、「あえて準備して挑む、芝生の上での不思議な退屈」と定義したい。

*・*・*

 

退屈といえば、小学生の夏休みを思い出す。

妹と、押入れに座って足をぶらぶら「暇だな〜やることがないな〜」と時間を持て余していた記憶。「その暇が大事なんだよ」と母は笑っていた。以前にも書いたことがあるエピソードだ。

外は蝉の声、うだるような蒸し暑さを思わせる夏の光が、障子から柔らかくこぼれ落ちる。エアコンのきんきんに効いた和室。今日なにしようかなぁ。これからどうしようかなぁ。自由と退屈が隣り合わせで煌めいている。まれに出会う手触りのある光景。

子ども時代、習い事もさせてもらったし、旅行にも連れて行ってもらった。でも幼い思い出のほとんどは時間に溶けてしまって、不思議とこんな瞬間が心に残っている。

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二歳の息子を見ていても「暇そうだな〜」と思うことがよくある。というか彼は基本的に24時間暇ではあるのだが、二歳なりに何かに集中しているときと、手持ち無沙汰になっているときが存在している。

朝夕の動画タイムと、一緒に散歩に出かける時間。これがとびきりのお楽しみイベントで、あとは図書館で借りてきた絵本を繰り返しめくり、ときに(いやかなり?)朗読をせがんでいる。窓際に椅子を持ってきて往来を眺めたり、お絵描きしたり、電車や車のオモチャを動かしたり、一緒にベランダに座ったり。まあそんな感じの一日だ。

*・*・*

 

桒原さやかさんの『北欧で見つけた 気持ちが軽くなる暮らし』という本を読んだ。

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暮らしの知恵も北欧料理レシピも真似したいものがたくさん載っているのだが、なかでもこの言葉が忘れられない。

「子どもだって退屈な時間も必要なんだからね」

スウェーデン人の旦那さんの言葉である。

北欧では子どもがひとりで過ごす時間は、「自分を育てる時間」としてポジティブに捉えられているのです。もちろん程度はあるものの、少しのさみしさや孤独は、「自分はなにを考えているのか?」「なにを感じているのか?」を知るために必要な時間だと考えられています。

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ひとつ言えることは、常に誰かが楽しませてくれる人生はない、ということ。

だから子どもをいつも楽しませようと気負わなくていいし、自分で考えて工夫することはとても大事だし、それ以上に退屈は退屈として受け取ることもときに必要。もちろん大人も。

楽しい日があればイマイチな日があり、心躍る瞬間があれば退屈な時間もある。だいたいそんな波の中を私たちは生きていく。

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今日も楽しい一日だっただろうか? もっと全力で一緒に遊んであげたほうがいいのだろうか? でも生活するので手一杯だったなぁ。よく思っている。

そんなときは押し入れから、ぶらぶらと揺らしていた四本の足を思い出す。幼い私と妹と、夏の光と幸福で退屈な時間。

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ゴロゴロ暇そうにしているなと思ったら、クレヨンとノートをテーブルに持ってきて豪快な殴り書きを始め、暗記するほど読んだ絵本を取り出して大声で読み始める。この世に生まれて二年ちょっとでも、ちゃんと退屈と付き合っている。

暇と退屈、生きるうえで避けられない、むしろ必要なもの。

来週もあえて準備して、芝生の上での不思議な退屈を満喫してみようと思う私である。

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ベランダにも、意味もなく座っているよ。

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Sweet+++ tea time
ayako

今日の一冊

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外国の暮らしぶりをただ褒めるという本ではなくて、著者の桒原さやかさんが北欧の文化に触れつつも試行錯誤で見いだしている、オリジナルな暮らしの知恵がつまっていました。

北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし (正しく暮らすシリーズ)

北欧で見つけた気持ちが軽くなる暮らし (正しく暮らすシリーズ)

  • 作者:桒原 さやか
  • 発売日: 2020/09/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

インスタ読書日記

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普段はインスタの読書アカウントに本の感想を書いているよ(最近更新できてないけど、2020年分はぜんぶ載せる予定!)

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