夫が友達と海外旅行に行ったとき、買ってきてくれるお土産は常にスリリングである。
まだ恋人同士だった2013年、オーストラリア旅行のお土産で、マンゴーのフレーバーティーを買ってきてくれた。
入れ物も可愛いし、トロピカルな香りのする紅茶が何種類か入っていて、それはそれは嬉しかったものだ。もう4年前であるが、一人暮らしのお部屋でもよく飲んだ覚えがある。
だが一秒たりとも安心してはならないのが、ジェットコースターと夫のお土産である。
翌年のトルコ旅行では、ものすごく変な食器と巨大な袋にパンパンに詰まった謎の紅茶を数袋買ってきた。このとき既に結婚して一緒に暮らしていたが、家で紅茶を飲むのは私だけである。
私ひとりで何年かけても絶対消化しきれない量の紅茶が、ラベルもないただのポリ袋に詰まっていた。それも一つではない。ここは紅茶倉庫か? いくら紅茶が好きといっても限度がある。
ガラスのカップは、控えめに言ってすごく変な柄と形だった。好みでない食器を好きな人からもらうと厄介であるということは、夫との付き合いで何度も学んできたことだ。
「大量の紅茶と、食器は絶対に買ってこないでね」
私は夫に念押しした。
かくして翌年のフィリピン旅行では、紅茶でも食器でもない物を買ってきてくれた。バッグである。おおバッグ!名前だけ聞くと素晴らしいお土産な気がする。
しかし安心してください。ものすごく変なバッグであった。
いわゆる高級品とは正反対に位置する、奇抜なイラストが描かれた不思議なビニールバッグであった。藁みたいなので編んである部分もある。謎だ。
「…ありがとう!」
「ayakoさんの好みかわからなかったんだけどさ、どうかな?」
「カラフルだね…プールに持って行くよ…」
私の声は震えていた。
しかし夫はこのあと、恐ろしいことを口にしたのである。
「空港でブランド物のバッグもいろいろあってさ、それと迷ったんだけど」
「え…なんでブランド物のバッグにしなかったの!?」
「いや〜だって何万もするバッグで失敗したら大変だけど、安いバッグなら好みじゃなくても安心だしね」
夫は「我ながら名案!」と顔に書いてニコニコしている。
(すごい!本当に全然好みじゃなかったよ!)
その言葉は胸にしまった。
せめて高級バッグだったら好みじゃなくてもメルカリで売れたのに。おそらく誰も買う人はいないであろう謎のビニールバッグが、我が家のクローゼットに眠っている。
ああ、シンプルライフは遠い…
さて、今年である。昨夜、台湾から帰ってきた夫から手渡されたのがこれである!
ステキ!
この瀟洒な赤い箱の中に、台湾のお茶が入っているらしい。
これはもう、オーストラリアお土産以来4年ぶりのヒットである。嬉しくて嬉しくて、ウキウキしながら開封した。
ああ…夫からこんな好みど真ん中のお土産をもらう日が来るなんて!
ゴールドの缶のふたもかわいいし、
ふたを開けたら入っていたカードもかわいかった。
思えばこの夏で、一緒にいるようになって丸4年、日々の積み重ねの証である…
夫は喜んでいる私を見て得意げに言った。
「このお茶はすごく高かったんだよ。6,000円、いや7,000円くらいだったかな」
「うわぁ…そんな高価なものを!ありがとう」
「まあ、余っちゃった台湾ドルを空港で使い切っちゃわないといけなくってね」
「・・・・・」
私の視線に気づいた夫は、ハッとして言い換えた。
「もちろん、その、ayakoさんに喜んでほしいという一心で、選んできたんだよ!」
お土産に一喜一憂するスリリングな日々すら、尊いのだ。
来年はもう、お土産すらないかもしれない。(思えば昨年の香港マカオ旅行は何もなかった気もする)
そうである。
トルコの変なコップやフィリピンの謎のビニールバッグの価値にね…
「来年もドキドキできるといいなぁ」
Sweet+++ tea time
ayako
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