ミュージシャンの岡村靖幸さんが、結婚をテーマにいろんな人と語り合う対談集がある。
「Will you marry me?」と書かれたビビッドなピンク色の本である。
この本はとっても面白いのでオススメなんですが、特に気になったのが、森三中の大島美幸さんと放送作家の鈴木おさむさんご夫婦の、とあるエピソードである。
愛のあるプレゼントとは何か
奥さんはプレゼントの天才で、僕が欲しいと思っているジャストのものを必ずプレゼントしてくれるんです
奥さんの大島美幸さんは、プレゼントを選ぶのがすごく上手いらしい。それに対して鈴木おさむさんは、
結婚して最初のクリスマスに、僕が「好きなものを買ってあげるからデパートに行こうよ」って言ったら、奥さんは「いらない」って言ったんです。
大島美幸さんは無欲な方なんだなぁ、偉いなぁ…と思っていたら、そういう話ではないらしい。
一週間後に、奥さんからこう告げられるのだ。
「あのときは非常に悲しかった」
と!
「そもそも、欲しいものを買ってやる、なんてプレゼントじゃない。プレゼントというのは、相手のことを思い、何をあげたら喜ぶだろうかと考え、自分もテンションを上げるのがプレゼントなんだ」と。「ワクワクしないんだったら、そんなのプレゼントじゃない!」
鈴木おさむさんには、この言葉がすごく刺さった。それまで多数の女の人と付き合ってきたけど、そんなふうに考えて女性にプレゼントしたことなんて一度もなかったと。
「これからの1年間、私の一挙一投足を見逃すな」
「私の誕生日に何をあげたら喜ぶかを考えてくれ」
こんなふうに奥さんから言われたんだっていうエピソードである。
さて、私は非常に影響を受けやすい性格である。いうまでもなく、このエピソードを含むご夫婦の話を読んで、いたく感動した。
ああ、夫婦たるものかくあるべきかな。私も見習いたい!さっそく、ソファでゴロゴロしている夫にこの対談を読み聞かせた。
「いい話だよねぇ!」
「そうだねぇ」
夫は食べログの画面から顔をあげて、ニコニコしている。
同意を得られたところで、嬉々として提案に入る。
「ねえ、私たちも一緒に買いにいくスタイルをやめて、今度からお互い内緒でプレゼントを買ってくるっていうのはどうだろう?」
「・・・・・」
明らかに乗り気ではない。
3年前の衝撃プレゼントを思い出した
そう、あれは私たちが付き合うことになった日であった。
一緒に蛍を見に行った帰り、彼は白金高輪の駅まで車で送ってくれた。「ちょっと渡すものがあるんだ」と、車の後部座席から何か包まれたものを出してきた。ロマンチックなデートの終わりである。
「きっとayakoさん好きかなぁと思って」
「ありがとう…!」
受け取った私は一人暮らしの部屋に戻り、ワクワクして包みを解いた。
そこには、大変シュールなカップが出現していた。
「・・・・・」
どういう経緯でこのシュールマグカップが「ayakoさんの好きそうなもの」と結論づけられたののか、その思考プロセスは完全なブラックボックスであった。
恋人からプレゼントをもらったというより、新しい生物と出会った瞬間に近かった。
「これ、どうしよう…」
ワクワクは、やっぱりいいや
中身のわからないプレゼントをもらうワクワクだけが、愛の証じゃないよね。あのワクワクなら、もう、大丈夫。けっこう、お腹いっぱい。
さっきまで輝かんばかりの結婚バイブルに見えていた対談本を、私はそっと閉じた。
「やっぱり、プレゼントはこれまでどおり一緒に買いに行こう」
「それがいいよ」
夫は安心して、食べログの画面に戻って行った。
今ならわかる、夫の「かわいい」の偏り具合。
緑くんを買ってきたのも、夫である。
ちなみに、今年のクリスマスプレゼントは、掃除機にしました。
Sweet+++ tea time
ayako
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