物事を続けるコツ、それは「あえてショボい回を作ること」である。
料理でもスポーツでも手芸でも、なんあれ続けていると少しずつ上手くなる。慣れてスピードや効率が上がったり、レパートリーが増えたり、見栄えがよくなったり、何らかの自分的上達がある。
それ自体は良いことのようであるが、上手くなっていくと心理的ハードルも勝手に上がっていく。次はもっといい感じになりたい。高みを目指したくなる。欲が出るのだ。それが励みになっているうちは良いが、気づけばだんだんと次が億劫になり、腰が重くなる。苦しいことは続かない。そして挫折。
何かを淡々と続けていくコツはだから、たまに意図的にでもハードルを下げてみることである。あえてショボい回を作るのだ。
話は突然変わるようであるが、先日、我が誕生日を迎えた。
「3と6の数字のロウソクを買いに行こうね。ママは36歳になるから、3と6のロウソクを買おうね。36歳になるからね！」
数字好きの長男が一ヶ月以上前からワクワクしていた。かわいいですね。しかし大人になると年齢をエンドレスで連呼されるのも矢を刺されるようである。
そうだ、自分のためにケーキを焼こう。
我ながら名案を思いついた。ふわふわのスポンジケーキに、生クリームと苺のトッピング。王道のようで実はいまだに作ったことがない類のお菓子である。長男が楽しみにしている3と6のロウソクを刺して素朴可愛いバースデーケーキにするのだッ！
私は手帳のやりたいことリストに「自分の誕生日ケーキを作る」と書き込み、士気を高めた。写真を撮ってブログにも書いちゃおう。タイトルはそう、「36歳の誕生日に自分でケーキを焼いてみた」みたいな感じか。素敵すぎる！作ってもいない想像のケーキで無限にウキウキできる。
満を持して週末大きなスーパーに苺を買いに行った。
800円。苺の値段である。生姜焼き定食が食べられそうだ。誕生日ケーキのためとはいえ、買えるはずがなかった。なぜなら近所の100円ローソンで小粒の可愛くて甘い苺が400円台で売られていて、それがさらにしょっちゅう値引きで280円になっていることを知っているからである。私は苺を買わずにスーパーを後にした。
では平日、近所の100円ローソンに行って苺を買ったのかといえば、否である。2歳次男はイヤイヤ期真っ只中、近所のコンビニも険しい登山ルートと化している。あとですね、全体としてヘトヘトである。ケーキを焼く気力が律儀に毎日残っていない。一番の大問題である。
というわけで現実を書きたい。タイトルはそう、「36歳の誕生日、疲れすぎて倒れそうなのに晩御飯を作っていた」
幼稚園の行事でエネルギーを吸い取られ、風邪もひいていて部屋はハリケーンが通過したレベルに散らかっていた。そんなバースデーディナーはもちろん…
オーブンにぶち込んだお肉と野菜（めちゃくちゃ美味しかった！）
かぼちゃと水菜のクリームスープ（ブレンダーなんて使うわけがない！）
自分への誕生日プレゼントに、Amazonでエストニア料理のレシピ本を買いました（やっと写真撮れた！）
以上である。
読者の皆さん、お気づきでしたでしょうか。
もう10日ほどブログが更新されていなかったことを。なぜならハードルが上がっていたからである。
「36歳の誕生日に自分でケーキを焼いてみた」という記事を目指していては、ブログの更新がが途絶えることは必至、ここはあえてショボい回を投入した次第である。あえて。
さて、カラフルな3と6のロウソクはキッチンで静かに眠っている。まもなく誕生日から二週間が過ぎようとしているが、果たしてケーキは作られるだろうか。
すぐに道端に転がる2歳児を連れて100円ローソンに出向き、安い苺を手に入れ、ヘトヘトの夜に自分を奮い立たせてスポンジケーキを焼き、そのスポンジケーキをうっかり食べてしまわずに生クリームを泡立て、見栄えよく塗り、苺を飾る。気が遠くなる。出来上がる頃には37歳になっていそうだ。
しかし、ここで私はとある事実に思い至った。今年、次男は3歳になり、長男は6歳になるのだ。素晴らしすぎる神の采配。3と6のロウソクは無駄にならないし、ブログはこうして今日も続いた。
とるに足らない愛すべき日々の、これ以上ハードルを下げようもない地味な日常だけど、肩の力はいくらでも抜いて書いていきたい。昨日より素晴らしい今日もすてきだけど、思い切りショボい日を受け入れるのも元気に暮らし続けるコツである。
36歳も、皆さんどうぞよろしくね。
Sweet+++ tea time
ayako
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