子どもの頃、私は猿だったのかもしれない

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「いったい何が起こってるの?」

そう思うことがよくあった。子ども時代の話である。

私は幼稚園生だった。みんな一列に並んで自分の番が来ると、人差し指を上に指したり下に向けたり、ときに左右に動かしている。先生はそれを見て何かチェックしている。

「はいおわり」と言われたら次の人の番である。

「いったい何が起こってるの?」

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お気づきのとおり、視力検査である。

私は困惑していた。まったく理解できない。どういうルールなのか、いつ説明があったのかも不明である。

ちなみに私の視力はすこぶる良い。したがってどんなサイズでも「 C」ははっきりと「C」に見える。どちら側に穴があいているかももちろんわかっている。が、まさかそれに合わせて指さししているとは思いもしない。

周りのルールが理解できないままとうとう自分の番を迎え、幼稚園生の私は泣きだしたい気持ちで人差し指を動かしていた。とりあえず上。次は右。その次は左。よくわかんないけどもっかい左。

異常な数値になって先生に怒られないか、それだけが不安であった。

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よくわからないが適当に手を動かし続けて、先生に「はいおわり」と言われると心底ほっとした。だが油断はできない。家に帰ると、先生から母に何か異常な結果が伝えられていたらどうしようと不安でたまらず、ビクビクしていた。視力検査ひとつでこうであるから、とにかく不安だらけの毎日である。

幼稚園生のあいだ、私はずっとルールを理解せず、毎回、泣きそうになりながら視力検査を乗り切ったのだ。人間の子どもの中に猿が混じったような具合である。

*・*・*

 

そんな私も小学生になった。

1年生のとき、初めての漢字テストがあった。

「いったい何が起こってるの?」

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私はテストというのをまったく理解していなかった。たしかに漢字らしきものを授業で習ったしノートにも練習したけど、まさか突然何も見ないで書け!と言われる日がくるとは…

「上」という漢字を書くだけであったが、私はどこの棒が飛び出してどこが飛び出さないのか、全然わからなかった。あれだけノートに書いたのに、まったく記憶にない。

それから何度も漢字テストは繰り返されていくわけだが、小学4年生のころ、個人面談で母が担任の先生から「漢字がちょっと…」と注意されていたくらいであるから、ずっと平仮名に依存した日々を送っていたわけである。しょうがない、猿だもの。

*・*・*

 

2年生のとき、リレーの選手に選ばれた。

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私が運動音痴であることはこのブログでも散々書いているが、走るのは足を動かすだけであるから技がいらない。痩せていることもあって速かったのである。

リレーの選手に選ばれると練習に出なければいけない。

「いったい何が起こってるの?」

私はこの謎の競技に恐れを抱いていた。どっち向きに走ればいいのかが、わからない。白線に立ち、よういどん!の後に私だけバトンを握りしめて反対方向に走って行った。だって猿だから。

先生に叱られ、どうやら方向が違ったと知る。こんな調子であるから、私は昼のリレー練習がとにかく苦痛であった。

その翌年からは、変なものに選ばれたくないという一心でゆっくり走るよう心がけ、無事に難を逃れた。

*・*・*

 

5年生のとき、クラスの女子が二分していた。

「いったい何が起こってるの?」

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好きな人と二人組をくめとか、4人組になれとか、学校はそういう残酷なことを日常的に行うわけであるが、私は完全に余っていた。

4月5月とぼんやり春を過ごしていたら、いつのまにか女子がグループを形成していたのだ。まったく気付かなかった。一年間、私は話す人のいない教室に通うこととなった。

とうとう人間の中で自分だけが猿だったと気づいた瞬間である。

*・*・*

 

さて、間抜けエピソードを4つも披露してしまいました。

え〜、どうやってまとめるのかというと、まあ、大人になるって素晴らしいことですよね。

視力検査のルールもわかってるし、漢字テストもないし、リレーに出る必要も誰かと秒で二人組をくむ必要もない。

毎日が楽園の、一人猿である。

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そうである。

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Sweet+++ tea time
ayako

 

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