似てない夫婦とティファールのお料理ロボット事件

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テレビや街で夫婦を見ると、「似てるなぁ」と思うことがよくある。

夫も奥さんも丸くてふんわりしていたり。二人とも「ザ・ヤンキー」という感じだったり。背が高くてスタイリッシュな雰囲気だったり。

私たち夫婦といえば、まったく似てない。外見について言えば、同じ「ヒト」に属していること以外はこれといった共通点が見当たらない。夫は背が高くガタイがいいし、私は小柄である。

中身はもっと似てない。男飯グルメ命の夫は、私が好きなおしゃれカフェや雑貨屋に、控えめにいって1mmも興味がない。共通の趣味が一つもないことは、いままでも何度か書いてきたとおりである。

まあでも、「似てない」からこそ、うまくいくこともあるんだろうなぁ。

私はそんなふうに思っていたのだ。

*・*・*

 

先だって、夫と家電量販店をのぞいてみた。

「最新の家電はどう進化してるかなぁ…」

「コンパクトな食洗機があったら買いたいなぁ」

二人とも予算はないのに異常にワクワクしていた。今まで見たこともない未来型メカに出会えるんじゃないかという胸の高まり。お掃除ロボットのミニマルを購入して以来、久しぶりにやってきた家電量販店である。

食洗機は大きいしやっぱりけっこう高いよねぇ、電子レンジもハイテクなの憧れるねぇ、そういえばオーブントースターもうちにあるの古いもんねぇ。盛り上がるセリフをはさみながらフロアを見て回る(しかし財布の紐は硬い)

そんな私たちは、とうとう見たことのないメカに遭遇した。その名も「未来型クッキングサポーター」。

とうとう…とうとうなの!? お料理ロボットの時代がきちゃったの!?

二人ともにわか興奮した。

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ロボットと暮らす日が待ち遠しい私であるが、中でもお料理ロボはダントツで来てほしい。味はまあまあでいいからとにかく作ってほしい。なんといっても料理は最も気乗りしない分野である(盛り付けは好きだが)

ティファールのマルチクッカー。それは白い巨大炊飯器みたいな形をしていた。商品名は「クックフォーミー」。

クックフォーミー!

最高ではないか。ぜひ私のために作ってほしい。

隣に置いてあるパンフレットには、ビーフカレーやスペアリブのマーマレード煮など、見てるだけでよだれが出そうなメニューが並んでいる。夫の目が輝いている。「ボタンひとつでお料理ナビ」という謳い文句に、私の目もがぜん輝く。

「どうやって作るんだろ?」

「メニューボタン押すだけでやってくれるってこと!?」

私たちが動揺を隠せずにいると、ここぞとばかりに白い割烹着を着た年配の女性スタッフがやってきた。

「こちらはティファールのお料理サポーターなんですよ。60のレシピが内蔵されていて、圧力調理なので本当に短い時間でできあがるんです」

「ほうう…!」

「ちょっと、試しにやってみますか?」

「ええッ、いいんですか!?」

「ちょうど今、肉じゃがのデモンストレーションをしてるんですよ。なので肉じゃがでよければ、ぜひ一緒にやってみませんか」

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そういえばこのギラついた家電量販店の中で、彼女の割烹着姿はかなり浮いている。お料理のデモンストレーションもやるんだなぁ…。私と夫は顔を見合わせて、じゃあ、と言った。

「じゃあ、よろしくお願いします」

幸い非常にヒマであった。お腹も空いていたし。

割烹着の婦人は頼もしく頷いた。

「やってみましょう。ちょっと待っててくださいね」

いったん奥に戻っていった。肉じゃがの材料でも取ってくるのだろうか?

彼女は手ぶらで戻ってくると、

「それではまず、ここのボタンを押してください」

「えっと、これですね…」

「それからメニューを選びます。えっと、ここのボタンで選択して…」

とにかく言う通りにボタンを押してゆく。

「今回は肉じゃがなのでこれを選んでください」

「はい…!」

私も夫も前のめりになっている。初めての体験である。

肉じゃがの材料が液晶画面に表示された。割烹着の婦人は言った。

「この画面に書いてある分量と切り方で、材料を用意します。本来なら、ここでフタを開けて材料を入れるんですね。今回はデモなので進みましょう」

「はい」

ほう…。材料を買ってきたり切ったりするのは自分でやらなきゃいけないんだな。まだまだお料理「サポーター」なのだ。私が夢想する未来型お料理ロボとは程遠い。

それにしても、ここで私は本物の野菜やお肉を入れるのかと思っていたので、実はちょっと拍子抜けした。もう中には完成した肉じゃがが入っているのだろう。

その後もボタンを押したり、本来ならここで○分間待ちます、とかいろんな工程を経て、

「はい、完成!ではフタを開けてみましょう!」

割烹着の婦人は元気よく言った。

私は勢いよくフタを開けるボタンを押した。夫も背後から緊張した面持ちで凝視している。

すると・・・

 

何 も 入 っ て な か っ た

 

ただの銀色のメカの内部があるだけである。ほくほくの肉じゃがを想定していただけに、そのシルバーの冷たさが目にしみた。

「こんな感じで、肉じゃがが作れるんです!」

割烹着姿のスタッフは、胸を張って満面の笑みで説明を終えた。

「あッ…なるほど…!」

私はカアっと顔が熱くなった。

なぜ自分は、本物の肉じゃがが出てくると思い込んでいたんだろう。思えばデモンストレーションと言われただけで、別に実物を本当に作るとか、試食できるなんて一度も言われてないのにッ!

食い意地を張った思い込みに、ただただ赤くなる。私は内心激しく動揺しつつも、取り繕って答えた。

「すごいですね…こんな機械、初めて見ました」

私たちはパンフレットを受け取ると、お辞儀をしてフラフラと家電量販店を後にした。

*・*・*

 

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「それにしても、全部自動的に料理してくれるわけじゃなかったねぇ」

帰り道、私は苦笑しつつ夫に話しかけた。

すると彼は、ちょっと神妙な面持ちで、こう言った。

「ayakoさん…」

「なに?」

「僕はてっきり、あの機械のフタを開けたら、肉じゃがが入ってるんだと思ってたよッ!」

恥ずかしさと悔しさがないまぜになった表情である。

「ただ試すだけなら肉じゃが以外のレシピでもよかったはずじゃんッ!なんであの人もよりによって割烹着なんか着てるんだッ!」

全力で悔しがっている夫に、まったく同じ勘違いをしていた私は大興奮した。二人でひとしきり盛り上がったところで、ふと思った。

外見が違っても共通の趣味がなくても関係ない。

 

我々は似た者同士である。

 

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そうである。

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Sweet+++ tea time
ayako

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