(※ 2018年4月7日更新)
並べただけで、心ときめく装丁の詩集たち!
暗記でも勉強でもない・・・大人になってから味わう詩は何百倍も楽しい。
忙しい日々を送る今こそ読みたい、おすすめの詩集6冊を紹介しよう。
1。『食器と食パンとペン 私の好きな短歌』
私が最もおすすめする現代短歌集。右ページには、現代歌人の短歌が一行。左ページには、安福望さんの優しいイラスト。
短歌を読んで「こういう意味かなぁ」と想像しつつ、隣ページの絵を見れば「こんな解釈や世界もあるのか!」と二重にワクワクする構成だ。
引用:私の好きな短歌3つ
舐めるたび春に近づく感触の雪ふる切手あと一枚に
しあわせにしてますように でも少しわたしが足りていませんように
リプトンをカップにしずめてゆっくりと振り子のように記憶をゆらす
装丁も、中の作りも、空間の余裕も、言葉の響きも絵の美しさも本当に素敵な一冊。
女性への本のプレゼントにも自信を持っておすすめする(私も贈られたい)
こんな人におすすめ
- とりあえず何か詩を読んでみたい
- 現代短歌ってどんなのがあるか知りたい
- 絵やアートも好き
- 本の贈り物を探している
- 疲れているときにぼんやり眺めたい
2。『寺山修司少女詩集』
何度「断捨離」を繰り返しても小さな本棚にずっと残っている一冊。
「文学的には意味があるのかもしれないけど意味不明な詩」はてんでダメ…(かっこつけて買っても絶対に開かなくなる)
寺山修司の詩は、そんな私にも、ごく簡単な言葉の組み合わせで、新しい世界を膨らませてくれるのです。
引用:「幸福についての七つの詩」ラスト
ポケットを探したって駄目です
空を見上げたって
涙ぐんで手紙を書いたって
駄目です
郵便局に日曜日があるように
幸福にだって休暇があるのですから
一冊の素敵な詩集があれば、いや、一編の詩があれば、落ち込んだ日の虚しいお酒も不安で買う自己啓発本も、何もいらないのである。
こんな人におすすめ
- 簡単な言葉で書かれた詩を読みたい
- 文庫本で気軽に持ち運べる詩集がほしい
- 短歌じゃない詩が読みたい
- ロマンチックな雰囲気が好き
△「ハート型の思い出」という詩の、形がハート。
詩集の空間ごと、素敵なアートなのです。
3。『つむじ風、ここにあります』
小豆島のブックカフェで見つけた一冊。木下龍也さんという若手現代歌人の短歌集です。言葉の面白さ、キリリと引き締まる感じ、甘すぎないので男女問わずおすすめできる一冊。
引用:私の好きな短歌3つ
空を買うついでに海も買いました水平線は手に入らない
花束を抱えて乗ってきた人のためにみんなでつくる空間
針に糸通せぬ父もメトロでは目を閉じたまま東京を縫う
電車の中、花束を抱えて乗ってきた人につくる空間も、目を閉じてメトロに揺られている父の姿も、不思議なくらいありありと浮かぶのです。
こんな人におすすめ
- 現代歌人の短歌に興味がある
- 若い人の作品を知りたい
- 男性に本の贈り物を探している
4。『きみを嫌いな奴はクズだよ』
なんというかもう、このタイトルからしてすでに最高じゃないでしょうか?
「きみを嫌いな奴はクズだよ!」
木下龍也さんの第二歌集、やっぱり最高でした。
開いたときの、装丁もおしゃれ。この空間の贅沢さが、詩集だよね。
引用:私の好きな短歌3つ
試着室から出て来ない恋人をいつまでも壁越しに見つめる
ブラジャーを漁師が海に撒いているきっと人魚のためなんだろう
君という特殊部隊が突き破る施錠してない僕の扉を
好きな歌がありすぎて、3つ選ぶのがめちゃくちゃ大変でした。
こんなひとにおすすめ
- 現代歌人の作品に興味がある
- 甘すぎないクールな雰囲気が好き
- 木下龍也さんの『つむじ風、ここにあります』はもう読んでしまった!
5。『三好達治詩集』
「学生時代に教科書で読んだあの詩をもう一度読みたい」
そう思って購入した。香り立つような言葉の響きが好きで、通勤電車の中でも何度も読み返した一冊です。
気に入った詩のページを折り曲げていたらボロボロになってしまった。
引用:有名な「乳母車」ラスト
淡くかなしきもののふる
紫陽花いろのもののふる道
母よ 私は知つてゐる
この道は遠く遠く果てしない道
そんな記憶があるわけもないのに、この詩を読むと、赤ん坊だった私をベビーカーに乗せて歩いていた(であろう)、今の私より若い母の姿を思い浮かべてしまうなぁ。
こんな人におすすめ
- 昔学校で習った詩を読んでみたい
- 文庫本で気軽に持ち運べる詩集がほしい
- ちょっと古風で文学的な詩も読んでみたい
6。『室生犀星詩集 』
軽井沢で出会った室生犀星の詩集。
家族や家庭について詠んだ詩も多く、生まれて間もなく父母から離され養子として貧しい家に育ったことが、少なからず影響しているのだと思う。
引用:「日本のゆふぐれ」
花と花とがもつれ合ふ
色がまじる
そよかぜは耳にすら音がない、
結婚みたいなものだ、
日本のゆふぐれは柔らかい、
卵の内部のやうに点れ
人びとはそのまはりに集う
いみじい物語を抱いて。
どこか寂しくて温かい、子どもの頃に感じた夕暮れの風景を思い出す。
こちらも最初の3冊に比べれば旧仮名遣いがあったり古風、疲れた心に染み入る言葉が詰まっている。
こんな人におすすめ
- ちょっと古風で文学的な詩も読んでみたい
- 文庫本で気軽に持ち運べる詩集がほしい
- 美しい日本語に触れたい
大人になった今こそ、詩を読もう
「理由はわからないけど、なんだかいい。なんだか好き」
そんな感覚だけを大事にとっておけること。何にも縛られないで自由に言葉の響きや匂いを楽しめること。
なんていったって、大人になってから読む詩は、圧倒的に「自由」なのです。
- 暗記しなくていい
- 好きな時に開いていい
- 深い意味を考えてもいいし、考えなくてもいい(ただ感じるだけでいい)
小説でも雑誌でもドラマでも映画でも、大人になれば「自由」に楽しめるコンテンツは無数にあるけれど、そのなかでも詩は特別だと思う。
今日から読もう!気楽に詩を楽しむ3つのコツ
今日は皆さんに「気楽に詩を楽しむ3つのポイント」を紹介しよう!
1。登場人物や物語の背景を考えなくていいんだよ
仕事から帰る電車の中、眠る前にほっと一息、ただ詩を眺めよう。
作者の生い立ちや執筆背景とかは、興味が出るまで別に気にしなくてもいいのです。
2。少ない情報量で、別世界に浸ろう
たった数行という「情報量の少なさ」でどこまでも別世界へ連れて行ってくれるのが詩。
情報の多さに疲れたら、詩集を開こう。
3。気に入った詩は、何度でも味わおう
最初から順番に読まなくても、全部読まなくてもいい。好きな一節ばかり眺めていていい。
詩はどこまでも自由なのです。
うつくしい詩集を持ってベッドに行こう。
明日の朝は、きっといい気分で目覚められるから。
おすすめの6冊
さらに素敵な作品に出会ったときには随時更新してゆきます。
Sweet+++ tea time
ayako
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