暮らしが変われば、家具が変わる。
二十代半ばの二人暮らしから始まった家具も、ちょっとずつ更新されてきた。ベビーチェアが増え、ダイニングテーブルが導入され、ローテーブルは去り、おもちゃ収納の木箱が仲間入り。古いテレビが去り、ポップインアラジン（プロジェクター）生活に。
セミダブルのベッドから布団、布団からエアリーマットレスに。マットレスは二枚から三枚に増え、次なる赤ん坊のためにベビーベッドもレンタルした。しかし生後四ヶ月で乗せた瞬間泣くようになり、前倒して返却。
赤子がやってきて、成長し、部屋が広くなり…家具寝具が出たり入ったりを繰り返す数年間、ドタバタな我が家をずっと見守ってきたのがソファーだった。
二人掛け、クリーム色の革張り。
44平米、二人暮らしの部屋にはぴったりだった。まだ子どももいなくて週末が丸々自由だった私たちは、たくさんの家具屋を見に行っては国内外の様々なソファーを試し、座り心地が最高でデザインもよくて値段も買えそうな範囲で…と悩みに悩んで、このソファーを選んだ。新宿の大塚家具だった。七年前の話だ。
長男が乗ったり跳ねたり、後半はかなり重労働を課してしまった。写真は光で飛ばしてごまかしているが、実際はボロッボロ。生地はよれ、革は剥げ、哀愁すら感じる。でもそれが、寝かしつけまで終えて疲れ切った私と同じくらいクタッとしていて、「お互いがんばってるね…」と仲間意識が芽生えたものである。
二人の新生児の授乳も、このソファーとともに乗り越えてきた。布団でちゃんと眠れた記憶がない大変な一ヶ月、とにかく柔らかい座り心地で癒された。
そんな想い出に満ち、愛着に溢れたソファー。次男が成長して飛び跳ねなくなる日まで添い遂げようと思っていた。なぜこのタイミングで買い替えようと思ったかといえば…
完全に容量オーバーに達したからである。
私が座れた試しがない。
次男が産まれ、授乳のために私も座りたい。スペース争いで毎回長男とケンカになるのも限界だ！
二台目のソファーは秒速で決まった。
信じられるだろうか。ソファーを買い替えてしまおうかと、思いついたその日に購入した。
週末の度に数多の家具屋を渡り歩き、何週間も悩んで決めた七年前が嘘のよう。ファミレスのメニューですら人生の分かれ道レベルの深刻さで悩める性格の私である。それでなくても買うのに勇気がいる大型家具なのに、この決断力はどこから来るのか…？
吟味する時間がない。
これに尽きる。
退屈な家具屋巡りに四歳男子が延々と付き合ってくれるはずもない（しかもこの初夏の頃、長男は不機嫌モードが発動していた）〇歳に至ってはグズグズするのがデフォルト。とにかく高速で決める必要がある。
三人がけ、インテリア的に変じゃない、（汚れ拭けるから）革張り、（確実にボロボロになるから）安い。条件はあまりにも明確、近所のホームセンターに陳列されていたものが必然的に運命のソファーとなった。そして気づく。この迷わなさもまた、大いなる自由ではないか？
選択肢は多ければ多いほど可能性は広がり続け、時間はたっぷりあればあるほど悩み続けられる。贅沢ともいえるけど、しんどい時もあるだろう。優柔不断で揺らぎやすく、延々と悩める性格の私にとっては特に。
ありがとう、元気男子ふたりと広過ぎない部屋。二代目ソファーはあっという間に搬入された！
いつだって、人生は甘くない。
ソファーを長くすれば、自分も座れると思っていた。1＋1＝2 だと無邪気に信じていたのだ。
念願の新しいソファー（2m超え）が来て、これでとうとう私も座れる！と思った数秒後 pic.twitter.com/o9BILLddTH
— ayako | 作って書くひと (@Sweettteatime) June 25, 2022
かくして夫が横たわると終了するソファーであるが、それでも日中の平安は保たれた。
「白いソファーさん、サヨナラなんだよ…」と切なそうな声で搬出を見送った長男は、新ソファーが運び込まれるや否や、もう何年も前からここでくつろいでましたという余裕で読書を満喫している。
長男にちょっとずれてもらえば、私もゆったり座って授乳ができる。四歳と三十四歳がケンカする必要はなくなった。
次男がつかまり立ちをし、やがて歩き出し、二人が戯れたりケンカをしたり、そんな日々をまた静かに見守ってくれるだろう。二ヶ月しか経っていないのに既にくたびれてきただなんて、信じたくない。
前回に比べるとだいぶリーズナブル、ゆえに座り心地もやや硬いが、長男がトランポリンの如く跳ね続けているので、やがて柔らかく馴染んでくるだろう…
男子二人が飛び跳ねなくなるその日まで、健やかなるときも病めるときも、富めるときも貧しきときも、一緒にボロボロになりながら添い遂げたいと思う。
そんなこんなのソファー購入日記でした！
Sweet+++ tea time
ayako
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