来世こそ素敵なおばあさんを目指したい

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お料理好きの祖母に、オーブンを買った。

買った、と言ってもプレゼントではなく単にインターネット環境にない78歳の祖母に変わって楽天で注文しただけである(翌々日には大分に到着した)

我が家とお揃いの、デロンギのコンベクションオーブン。

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昨年の春、このオーブンを買ったことを電話で話したら、祖母は大変に羨ましがっていた。

「オーブンといったらデロンギやわ、いつか使いたいと思っていたの。それに電子レンジと一緒になってないなんて羨ましい…別々が絶対にいいわ」

念願の買い替えとなり、ピカピカの小さなオーブンは無事にキッチンに置かれたそうで、祖母の声は一段と弾んでいた。

「さっそくピザを焼こうと思ってるの!」

ピザ…

オーブンを買ってもうすぐ一年弱であるが焼いたことがない。「30度の場所に生地をおいて発酵させ二倍の大きさにする」とかもうわからなすぎて笑う(家のどこに30度のエリアがあるのか)あまりにもハードルが高い。

焼き菓子と違って、ドミノピザにピザハット、サルバトーレクオモといったデリバリーの精鋭たちも常に目を光らせている状況だ。敵はあまりにも強い。

「付属のレシピの本にちゃんと載ってたで」

祖母はなんでもないことのように言った。オーブン付属のレシピブックもすでに読み込んでいるとは…字が細かいし何やら複雑な調味料やら工程も多くて、あれは私の中でかなり気合を入れないと開けない代物と化している。

しかし長年料理をしてきた祖母にとっては、すっと入ってくる手順ばかりなのだろう。電話の向こう側で、小麦粉と強力粉、それぞれの場合のピザ生地の仕上がりの違いなどをスラスラと語っている。

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「そういえば10年以上前に教えてもらったスパイシースペアリブ、久々に作ったんだ」

このブログの話を祖母に告げた。

sweeteatime.hatenablog.com

「そんな料理もあったかしらね〜」といった反応を予期していたが、

「あれは簡単やろ?でもガラムマサラがお肉のくさみを消してくれて絶妙なんよ、それで最後にほんのり入れるお砂糖が…」

これまたスラスラとレシピについて語り始めるではないか。

なんでそんなに覚えてるの?

「気に入って何度も作ったけん、覚えてるんよ」

10年以上前の話である。私は何度ボルシチを作ろうと、毎回ゼロからのスタートである。手帳のメモとホームページを阿呆のように何度も見返して行ったり来たりしている。

その後、同じく10年前に教わったサラダの話をすると、祖母はやはり淀みなく調味料の配合を語り出した。どうなっているんだ。

*・*・*

 

話は突然変わるようだが、ここ最近毎晩「ソーイングビー」を一話ずつ観るのが楽しみとなっている。イギリスで大人気のアマチュア裁縫バトル番組である。

簡単に説明すると、イギリス中から選ばれた老若男女8人の裁縫名人たちが、厳しい時間制限の中で様々な課題をこなし、縫製の技量や芸術性といった観点から競い合うという番組だ。

まだシーズン1しか見ていないのだが、そこに出てくる81歳の女性アンの魅力に、私は完全に打ちのめされていた…

いや、最初に挑戦者たちをパッと見したときはね、夫と話してたんですよ。

「これは若い方がきっと有利だよね…」と。

型紙を読み込んだり繊細な柄合わせをしたり、気が遠くなるような細かい作業の連続である。加えてタイトな時間制限。判断力と集中力も問われる。7時間連続で作業してイブニングドレスを縫いあげたりするのである。体力と精神力も必須だろう。

こんな白髪の上品なおばあさまでは、細かい縫い目を見るだけで疲れてしまうよ…などと心配すらしていた。だがどうだろう、いざ課題が始まると一気に印象が変わるのだ。

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81歳のアンの仕立てるもの一つ一つが本当に、息を呑む素晴らしさなのである。卓越する技量。圧倒的な経験値。必ず時間内に仕上げてくる調整能力と集中力。パニックになる若いメンバーを慰める心の余裕まで持っている。

洋裁歴75年、5人の子ども、7人の孫がいて、自分と家族の服を作り続けてきたという。

私は気づいたのである。いつの間にか自分の中には、盛り上がって下がっていくような人生の曲線イメージが出来上がっていたことに。20代〜40代が山場で、あとは基本下り坂、というような。

もちろん衰える能力もあるだろう。老眼は進み、皺と白髪は増え、どの程度健康でいられるかもわからないし、きっと不具合は無数にでてくる。

しかし人生はグラフでは描けない。日々は積み重ねなのだ。いやむしろ、それでしかない。生きてきた年月だけの経験。その重みと深みと豊かさよ。

そうだ、積み重ねていこう。

ミシンを始めてピザも焼こう。78歳の祖母、81歳のアンに感化された私は、興奮のままに眠りについた。

*・*・*

 

さて翌日である。

騒がしい二歳児を腰に巻きつけつつ洗濯朝食食器洗い…信じられるだろうか? もう午前中が終わりに近づいているのである。嘘だろう。掃除機もかけないと米粒が…トイレも座らせなきゃだし服も着てくれないし、あっ生協がきた!ゼーハーゼーハー

積み重ならない日々

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とりあえず今世は「呼吸してるだけで偉い」という方針でやっていきたい。

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いつかの明るい季節に撮った写真たち。春は近い。

ユニクロ着てドミノピザ食べて、ゆるゆる冬を乗り切るぞ〜!

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Sweet+++ tea time
ayako

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