あなたが何色の靴下を履きどんな皿で食べようと、地球は今日も回るのだ

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こだわりが人を苦しくする。

こだわらないこと、おおらかでいること、それがラクに生きるための秘訣にちがいない。これもいいし、あれもいい。隣の芝生も自分の芝生も、まあまあ青いし、ときには枯れる。

あなたが何色の靴下を履いてどんな皿で何を食べようと、地球は1mmの影響もなくゆるゆる回り続けるのだ。

*・*・*

 

二歳の王子が、絵に描いたような「イヤイヤ期」を迎えている。

なんとなく我が子にはイヤイヤ期なんてない気がする…!と思っていた私はまだ目が眩んでいたのであろう。付き合い始め、夫のことを「同い年なのにどうしてこんな大人なの…」と感激していたのを遠く思い出す。なにごとも始まりは輝いている。

道のど真ん中で、スーパーの入り口で、何かひとつダメなことがあれば所構わず絶望する。ひっくり返っておもちゃを投げ、あられもなく泣き怒っている。カレーの中にほうれん草らしきものを見つければ、椅子を倒しスプーンを放り投げ、空腹と絶望の中で身悶えている。

"黒い靴下事件"、あれもまた恐ろしかった。「黒と赤でカッコイイよ〜」と気分を持ち上げたところ「くろあか、かっくいい」と一度はご満悦だったものの、これから干す洗濯カゴの中に濡れたオレンジの靴下を見つけた瞬間、すべては終わった。

オレンジ色の靴下を履きたい。絶対履きたい。濡れていようが関係ない。靴下がオレンジ色でなければもう今日生きる意味がない。泣き怒り車をぶん投げワッショイワッショイ、部屋は荒れに荒れ、追いかける私は順調に「男の子の怖いお母さん」と化している。

なんとか黄色い靴下に落ち着くまでの数十分、怒り転がるその姿を見て、私は哀れを感じた。

こだわり、それが彼をこうも苦しめているのだ。

リュックを背負う、靴下を選ぶ、靴を履く、随処に彼のこだわりポイントがあり、1mmでもズレれば即絶望である。大変ストレスフルな日々であろう。

*・*・*

 

話は突然変わるようであるが、私は柄が好きである。なかでも花柄には目がない。

当然の帰結として、我が家には柄物の皿が溢れている。

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昨日のティータイム

総花柄。So what? これが私の生きる道。

その狭い小道を突き進み、ひたすらに花柄皿を集めてきた私であるが、先日ふとインスタグラムを見ていたら気づいてしまった。

白いお皿で統一してるの、とんでもなくお洒落では…?

薄いベージュやグレーのテーブルクロス(もちろんリネン100%)に、ちょっとずつ質感の違う美しい白い皿が並ぶ。その上には上品でちょっと非日常な手料理がセンスよく盛られている。

インスタ、雑誌、写真集。それこそ目を皿のようにして皿を見る。

ちょっと待って、もしかしてお洒落な人って、基本白い器に盛ってる…?!

今まで素通りしていた大人の世界がそこには広がっていた。上品で、統一感があり、料理が映える。白い器、その無限の可能性。あんな単調で退屈なものをどうして買う人がいるんだろうと、鼻で笑っていた自分の未熟さを思う。

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そうか、そうなのか。ときどきアクセントのように柄物のお皿があるくらいがちょうどいいのだ。これ以上花柄を集めている場合ではない。いろんなニュアンスの白い皿、それが今の私に最も必要なもの。器に目覚めた私の第二ステージであった。

食器棚を見る。いつの間にか乱れている。なんとなく景品で選んでしまったSuicaのペンギンポット、貰い物のポーリッシュポタリー、メルカリで欲しい皿とセットだった不思議な柄皿、エレガントな花柄の隣にはキャラもの猫どんぶり。混沌である。ここに王子のアンパンマンマグが加われば完璧だろう。「ザ・実家」な食器棚が順調に形成されつつある。

統一感。断捨離。

それこそ今の私に必要なもの。

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さらに気づいたことがある。私はどうやらティーセットばかり集めている。簡単に言おう、魚を乗せる皿がない。花柄ケーキ皿に鯖の塩焼きを載せている。なぜそれを不思議に思わなかったのだろう。

そうとわかれば矢も盾もたまらず整理したい。

変な皿を処分し、魚や肉を乗せる白い器を至急そろえなければ。

覚醒した私は忙しい。食器棚の前で出したり入れたり入れたり出したり、永遠とやっている。器の本を読み込み、楽天ルームで白い皿コレクションを作ってせっせと更新する。

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ああ欲しい、いろいろ欲しい。

しかしスペースは有限だ。

断捨離熱に浮かされた私は、処分する皿を選別し段ボール箱にまとめた。だがどうするか。捨てるのは忍びない。だって割れてるわけじゃない。ということはメルカリか。ああ、写真を撮って出品して梱包して発送するなんて、考えただけで気が遠くなる。暴君の夜泣きも再発し、それでなくとも今余裕はないのだ…

「なんか大変そうだね…」

途方に暮れる私を呆然と見つめる男の姿があった。何一つこだわらない男、夫である。

*・*・*

 

こだわりが人を苦しくする。

こだわらないこと、おおらかでいること、それがラクに生きるための秘訣にちがいない。

*・*・*

 

頭ではわかっている。

気にしなければいいのだ。どうせ乗せるのは豚肉の生姜焼きではないか。ホームパーティーになると途端に出前を取るくせに、何をそんなにこだわっているのか。

猫柄どんぶりとペンギン柄ポットを堂々と並べ、花柄のケーキ皿で元気よく鯖を食べればいい。そうすればメルカリに出品しなくていい。「こちら値下げできますか〜?」という陽気なコメントにイライラしなくていいし梱包しなくていいし発送しなくていい。白い皿を探さなくていいし、食器棚の整理もしなくていい。

頭ではわかっている。

だが私は白い食卓をやりたい。絶対にやりたい。

もう手遅れである。すべては始まってしまった。

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オレンジ色の靴下を見つけてしまったのに、今さら黒で妥協できるだろうか?

否である。濡れていたって今すぐ履きたい。そうだろう?

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床にこそ転がらないが、二歳児の気持ちか痛いほどわかる。幸か不幸かそんな三十二歳なのである。

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Sweet+++ tea time
ayako

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