他愛のない話こそ最強

f:id:sweeteatime:20170729235430j:plain

近所のパン屋さんに行くと、お店のおばあさんといつも世間話をする。世間話というか、要は天気の話である。

「今日は暑いですねぇ」

「ほんと、びっくりするほど暑いですねぇ」

「おとといまではちょっと涼しかったのに」

「まだまだ夏はこれからですもんねぇ」

最近はこんな感じである。お互い意味もなくニコニコ顔である。冬はこれが寒いバージョンに変わり、秋は「すっかり涼しくなりましたねぇ」と始まるわけだ。

こんな天気のやりとりをしている間に、レジとお会計が終わり、私は小銭とレシートをお財布に詰め、ほくほくの焼きたてパンが入ったビニール袋をぶら下げて、会釈をしてお店を後にする。

f:id:sweeteatime:20170729235626j:plain

少し前、おばあさんがしばし入院していたことは風の噂に聞いた。このあいだ近くのマンションのオープンルームにでかけたらエントランスで偶然お会いして、住んでいるところまでなんとなく知っている。でももちろん、話すのはいつも天気のことである。

おばあさんは優しく、とても平和なひとときで、私はこのみんなに共通の、そして一切プライベートに立ち入らない天気という話題が、妙に愛おしいなぁと最近思う。こどもの頃は、大人のこういう形式ばった会話ってめんどくさそうだなぁと思っていたのに。

*・*・*

 

友達と会って話すとき、女子トークといえば恋愛だが、何でも隠さず共有したい派のひともけっこういるようだ。妹もそうだと言っていた。

けっこうセキララな恋愛話や重い話を聞いたとき、私は実はドキドキしてしまう。こんな話をしてくれているのだから、自分も何か同じくらい重かったり深かったりプライベートなことを、話すべきなんだろうか!?昨日食べたラーメンが美味しかったとか、そんな話じゃまずいんじゃないか!?(少なくとも女子力的にはまずい)

しかしないのだ。友達に話すような深い話がない。そこまでの悩みもないし、あっても私はごく近い人に相談するか本を読むか、時間が解決するのを待つタイプのように思う。

f:id:sweeteatime:20170729235903j:plain

友達の話を聞きながら、う〜ん、どうしよう!?私はどんな話をすべきなんだろう!?ぐるぐる思考が回り始めたとき、思い出すのだ。「他愛のない話こそ最強」だってことを。

普段自分が心和んだり、楽しかったり、元気をもらっている無数のものたち。毎朝楽しみにしている4コマ漫画のツイートとか、パン屋のおばあさんとの世間話とか、「ガウチョパンツ」を「がちょうパンツ」だと思い込んでいたこととか、インスタに毎晩投稿されるキュートな猫写真とか、夫の寝言とか、集めてるポイントカードのたまり具合とか。

重要じゃない、必要でもない、一見どうでもいいようなものたちに、毎日どれだけ助けられ、慰められちゃってるんだろう。

f:id:sweeteatime:20170728185523j:plain

プライベートな話をしてくれたから、自分も同じくらい生活の秘密を共有しきゃいけないなんてことは、きっとなく。みんなそれぞれに悲しかったり大変だったりする日々だからこそ、あえてそこに立ち入らない優しさ労わりもきっとあって。

だからやっぱり、「他愛のない話こそ最強」なのだ。

*・*・*

 

先だって、外から帰って来ると、夫が深刻な顔をして玄関に飛び出してきた。

「ayakoさん聞いてよッ」

夫がこんなに余裕がないのは珍しい。私は心配になった。

「さっきマンションの一階で、大量の唐揚げをお皿に乗せて自転車に乗る女の人を見たんだッ!」

「・・・・・」

「いったい何のために…どこに持っていくんだろう…」

f:id:sweeteatime:20170729234049j:plain

これが最強、なのか…?

f:id:sweeteatime:20161011113545j:plain:w220

Sweet+++ tea time
ayako

こちらもどうぞ

sweeteatime.hatenablog.com

sweeteatime.hatenablog.com

sweeteatime.hatenablog.com