どんなに幸せに暮らしていても、なんとなく日々ちょっとした疲れとか「生活の垢」みたいなものが溜まってきて、モヤモヤするなぁということがあるかと思う。
本当に根本原因を取り除かないと解決しないよ!という人生問題もあれば、逆に根本原因なんてないんだよ!という微妙な落ち込みもある。そっちの方が多いかもしれない。
そういう微妙モヤモヤを一瞬で晴らす方法を、私は知っている。
何かって?
それはもう、めちゃくちゃ面白い映画を一本観ることである。
渋谷のアップリンクという大好きな映画館で一本映画を観た。アカデミー賞作品賞を受賞した『ムーンライト』である。
主人公の少年シャロンは、麻薬中毒の母親との貧しく寂しいふたり暮らしをしている。学校ではいじめにいじめられ、日々に明るい出来事はなく、俯きがちで無口な少年だ。生まれる家は選べないんだなぁという事実が、痛いほど心にしみる日々である。
そんな彼に手を差し伸べてくれる大人がいたり、親友がいたり。マイアミを舞台に繰り広げられる幼少期、少年期、青年期が、悲しいほどあざやかで美しい色彩をもって展開するのだ。
まだ見てないという方は、ぜひ、予告編を観てみてください。音楽と色彩が、本当に素敵なので。
これはもう、DVDを買って家でなんども観たいなぁと思う映画だった。
忘れられない台詞たち
なかでも3つのセリフが刺さったので、記録しておきたいと思う。
青年期のシャロンが、親友であり特別な想いを寄せる相手でもあるケヴィンにいう台詞である。
「泣きすぎて、自分が水滴になりそうだ」
シャロンの生きる毎日の悲しさが、こんなにあらわれた言葉ってあるだろうか。美しい海の色とともに、忘れられないシーンだった。
孤独なシャロンを助けてくれる数少ない大人のひとり、テレサという女性がいる。寡黙で常に下を向いているシャロンに、彼女はあたたかい家でごはんを食べさせながらこう言うのだ。
「うつむかないで。うちのルールは愛と自信を持つことよ」
愛と自信を持つこと。
ありふれているようで、なんて素敵な言葉なんだろう。どっちかだけではだめなのだ。普通に書くと白けてしまうような言葉が、すっと砂地に染みる水のように入ってくるのが、映画の醍醐味だなぁと思う。
大人になったシャロンに、薬物治療施設に住む老いた母親がかける言葉が本当に哀しいのだ。
「私はあなたを愛してる。あなたは愛さなくていい。愛が必要な時にちゃんと与えなかったから。でも、私はあなたを愛してる」
ここでシャロンも母親も涙を流すのだが、画面のこちら側で私も号泣したのは言うまでもない(ほぼ全ての映画で泣いているが)
映画のあと、アップリンクのおしゃれなレストランで食べたフルーツと豆乳杏仁のデザート。
もっと映画を、観てみたいな。
短いコンテンツが主流の今、2時間以上を架空の物語にゆだねるって凄いことだ。
心に響いた無数の物語や色、台詞たちは、きっと無意識の世界に沈殿して、未来の私を助けてくれるような気がするんだ。
いつも「自分」のことばかりだと息苦しくなるのかもね。ときには、他人の物語に、身も心もゆだねてみよう。
Sweet+++ tea time
ayako
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