私の大好きな詩集、高村幸太郎の『智恵子抄』。
持ち歩いたりお風呂で読んだりして、ダメにしてしまっては、何度も何度も買った本。
『智恵子抄』の中にある「あどけない話」という詩には、こんな一節がある。
智恵子は東京に空が無いといふ。
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間(あいだ)に在るのは、
切っても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
なぜ千恵子は「東京に空が無い」というかというと、
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
毎日出ている青い空が
智恵子のほんとうの空だといふ。
あどけない空の話である。
なるほど東京の空に山はない。
旅行で他の土地に行ったとき、写真で切り取った空の中に山並みがあると、いつもこの一節を思い出す。
遠くにきたんだなぁ、と強く思う。
でも、登山を始めて知ったのです。
東京にも山が、あるのです!
5月5日、早朝6時台の電車に乗ってやってきた、軍畑駅。私がこの標識を見るまで、「ぐんばた」と呼んでいたことは、言うまでもない・・・
奥多摩の高水三山に登ったよ
軍畑(いくさばた)の駅を出ると、広がる光景。ここも「東京都」なんだなぁと思うと、不思議な気持ちになる。
とっても可愛い、まるでぶどうのように連なる藤の花を見つけた。紅藤というんだって。壁紙の模様みたいに、まっすぐ横に伸びるピンク色!
空は優しく青く、生まれたばかりの新緑が穏やかに風にそよいでいた。半年ぶりの山登り、体力のない私はドキドキしていた。
はじめて登る高水三山
高水三山は高水三、岩茸石山(いわたけいしやま)、惣岳山(そうがくさん)の三つの山頂を味わえる、ちょっとお得な縦走コース。
最初の舗装路のところが一番の急勾配で、山道に入ってからは景色を楽しみながら歩けます。(とかいって、上り坂になるたびに悲鳴をあげていた私…)
森の中は、初夏の光が満ちていた!
新緑が光に透けて綺麗なこの季節は、空を見上げるのがとにかく楽しい。
友達二人と夫の4人。平坦な道のときはベラベラと喋り続けているが、急勾配になると無口になる分かりやすいayakoさんである…
高すぎる木とか、大きすぎる岩とか、ワクワクする。
新緑に囲まれた水山常福院が綺麗だった
緑は綺麗だけどわりと単調なことが多い登山で、とびきり素敵な景色に出会ってしまった。
階段の向こうに、お寺!
私はGR、友達はミラーレス一眼を持ってきていて、二人ともここから写真撮影に没頭する。綺麗な景色の場所に来ると、疲れもふっとんじゃうから不思議。(男二人は暇そうであった)
はぁ…溜息が出ちゃうこの景色。
高水山常福院は真言宗のお寺らしい。新緑の中で木漏れ日を浴びる木造建築って、なんて綺麗なんだろう!
お参りをしたよ
ちなみに私は5円で二つお願いをしてみた。
無事に山を登って下ることができますように
たくさんカロリーを消費して痩せますように
この二つである。
「なんでそんな直近のこと願うわけ…」と夫には呆れられたけど、晴れて一つ目の願いは叶えられた。ありがたいよね。二つ目は、聞かないでおこうね。5円だしね。
ひとつめの山頂に辿り着いたよ
高水山の山頂である。
ひとまず登りきったということで一安心。ここからは残り2つの山頂を越えていくので、若干の登り下りがある。まあ、ぜんぜん若干じゃなかったんですが。
下を見ると、桜の花びら。
山の上はまだ桜が咲いている木があって、風に乗ってさらさらと花びらが流れてゆくのが本当に綺麗だった。
「ここを登ったらお昼ご飯です」
ここを登ったら…
私はクラクラしていたが、夫は後ろでこう呟いていた。
「ここを登ったらお昼ご飯なら、駆け上がっちゃうよね」
食いしん坊は強し。
絶景の山頂で食べるごはんは美味しすぎた
岩茸石山(いわたけいしやま)の山頂は視界がぐっと開けて、一番の絶景スポットになっている。
休憩している人たちの山登りの服がカラフルで可愛い。
ごはんの時間だよ!
さあ、ここで待望のお昼ごはんである。
夫と私のリュックから、ドサっと出てきた食料はこのとおり。
いったい何しに来ているのか!?
これらを食べるための水も二リットルずつ持っていたので、とにかくリュックが重く翌日は肩に湿布を貼って過ごすこととなった。
でもね・・・
お餅入りどん兵衛や牛飯に鶏肉団子のお味噌汁。
山頂で食べるごはんの美味しさといったら!これはやめられません。
恐ろしいことに、持って来た食料はほぼ全て食べきってしまった!
お友達がランチパックを焼いてくれた。
絶景の中で食べるランチパック!この世で一番美味しいランチパック!
楽しすぎたなぁ。
三つめの山頂もクリアできたよ
下っては、登る。
「降りた分、また登らなきゃいけないんだよあなぁ」とビクビクしながら進む。
わざわざ二時間半も電車に揺られて登山に来たのに、「なぜ神様は坂道を作ったんだろう。地面はずっと平坦だったらいいのに」と真剣に思っている自分がいた。
惣岳山(そうがくさん)の山頂も無事にクリア…感激!
ここは視界が開けていないので、この棒だけが心の支え。
下山の楽しさを満喫する
もう、安心の極みですよ。
試験で苦手な数学が終わった後の、社会とか英語の開放的な気分ですよ!(私は文系です)
迫力いっぱいの大樹に出会ったよ
下山途中に遭遇した、神秘的な大樹。途中から二つに割れてしまっているみたいだけど、その存在感に圧倒されてしまった。
180cmの男二人が、小人みたいに見上げている…!
まっすぐに伸びる樹木に木漏れ日が落ちて、景色はどこまでも透明。
何度か滑りながらも、高水三山の登山、無事に終えることができたのでした!
行きは軍畑駅から出発で、帰りは御嶽駅へ。
レトロな駅舎と丸ポストが、かわいすぎたよね。
いやあ、温泉に入って、お酒を飲んでお刺身を食べて、最後はラーメンで〆たよね!(消費カロリー<<<<摂取カロリー)
Sweet+++ tea time
ayako
次回予告
明日は「他人と一緒に暮らすって、難しいよね」という日常エッセイの予定です。お楽しみに〜!
おすすめ登山本
初級者向け、日帰りで行ける東京近郊の登山コースが22こ紹介されています。地図も付いているし写真もいっぱいで、愛用しています。
今日のカメラ
写ルンですサイズの小ささなのに綺麗に撮れる。今日の写真もすべてGRで撮りました。持ち歩くのにぴったりで手放せないカメラなのです!
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