日曜日の昼下がり、私たちは海をみたくて豊洲公園にやってきた。
はい、嘘をつきました。
実際は「豊洲パエリア」というグルメ祭り目当てにやってきたのだ。東京お散歩日記である。
パエリアの写真がない理由
長蛇の列に並んでようやく手にした一皿のパエリアを片手に、別の列に並んで缶ビールを入手。さらにムール貝を買うため新たな長蛇の列へと飛び込む。
おしゃれライフスタイルの紹介はどこへ行ったのだろう? 終始両手が忙しく、カメラを構える暇はなかったのである。
だが、小さな紙皿によそってもらったそのパエリアは、28年間のパエリア史上一番美味しかった。
ひとまず満腹になった私たちは、ここでようやく海の存在に気づく。
初夏の豊洲公園は、こんなにも気持ちがいい
芝生と、土手と、その向こうの東京湾に高層ビルが、爽やかな空気に溶けてキラキラと輝く。
初夏の風に吹かれながら、ちょっとぬるくなった缶ビールを飲む。いつもは川沿いの景色なので、(まあ東京湾なんて海と呼ばないかもしれないけど)海沿いはなんだか新鮮だ。
HELLO, TOKYO BAY!
(謎の掛け声)
いざ、ヴィレッジヴァンガード・ダイナーへ
パエリア一皿とムール貝では到底お腹を満たすことのできなかった我々である。日曜日でオフィスビルのレストランは軒並み閉まっていたが、意中の店へと飛び込んだ。
本屋で有名なヴィレヴァンだけど、お仲間のハンバーガー屋さん「ヴィレッジヴァンガード・ダイナー」があるって、皆さんご存知だろうか?
下町にはない憧れのテラス席
おしゃれな街にはおしゃれなカフェがあり、おしゃれなカフェにはテラス席がある。つまり「テラス席に座る=おしゃれの最上級」である。
読者の皆さん、私が何を言いたいかお分かりいただけただろうか?
そう、私の住む東京下町にはテラス席がないのである。いや、厳密にはなくはないが、全く似合わない。
同じ江東区でありながら、清澄白河や森下にはない都会的な景色はさすが豊洲である。
ここでは赤ワインを注文する。
かなりいい気分になってきたが、真剣にメニューを選定。
アボカドたっぷりコブサラダ
女なら100%アボカドが好きと勘違いして、合コンやデートでとりあえずアボカドメニューを選んでおけば間違いないと思っている人が必ずいるものだ。浅はかでなくてなんであろう?
ちなみに、私はアボカドが大好物である。
サラダも初夏の色。このグリーンたまらない。
アボカドヴィレッジヴァンガードバーガー
衝撃の19文字。超絶長い名前のハンバーガーである。
ちなみに、
縦にも長い。
「崩壊サンドイッチ」が大好きなんです
そう、今回皆さんにお話したかったのはパエリアではない。私が愛してやまない「崩壊サンドイッチ」のことである。
「崩壊サンドイッチ」とは
アボカドヴィレッジヴァンガードバーガー然り、途中で崩れるくらい中身がたくさん詰まったサンドイッチ系の食べ物のことをいう。
言うまでもなく私の造語である。
これは私が毎日のように食べている大好物の手作り「崩壊サンドイッチ」である。横から見てみよう。
お店みたいに丁寧に計算して中身を作っているわけじゃない。その時々の思いつきで冷蔵庫にあるものを詰め込んでいるため、確実に崩壊する代物である。
でも、こぼれ落ちる中身と戦いながら、美味しいものを夢中で食べるって最高の瞬間。幸福そのもの。
「崩壊サンドイッチ」と「ありあわせスパゲティー」
「崩壊サンドイッチ」は作るのも食べるのも楽しいんだけど、それに通ずるエピソードが、村上春樹氏のエッセイ「村上朝日堂 」にある。
村上春樹さんがひとり暮らしの学生時代に頻繁に作っていたという、「ありあわせスパゲティー」の話。
「ありあわせスパゲティー」といってもべつに明確な味の基準点があるわけではなく、とにかくスパゲティーをいっぱいゆでておいて、そこにその時点で冷蔵庫に残っていたものをよりごのみせずに全部ぶちこんでぐしゃぐしゃにかきまわすという、それだけのものである。
実例も挙げられていて、お餅とトマトとサラミ・ハムと卵とふりかけと大根の葉っぱが全部入ってたりするらしい。
これは今思うとかなりすごいんだけど、当時は「あーうまいうまい」と思ってガツガツ食っていた。物好きな方は一度ためしてみて下さい。かなり強力ですから。ふふふ。
安西水丸さんの挿絵と相まって、これが妙に美味しそうに感じちゃう。初めて読んだ大学生の頃からやけに心に残るエピソードなのである。
*・*・*
肩の力を抜いて、冷蔵庫とキッチンを往復するレシピ不在の名もなき料理。これがすごくいい。私も、もっといろんなものを挟んで「崩壊サンドイッチ」を楽しみたい。
キッチンで空腹にかられてデタラメサンドイッチを作る私を、クスクスと笑っている緑くんであった。
今日のまとめ
初夏の光と日曜日の空気感、大好きなサンドイッチの話。関係ないけどなんとなく結びついている今の感じを、書き残しておきたくて書いたエントリである。あたりまえのことなんだけど、28歳の5月は、1回だけ。2016年の5月15日(日)も、1回だけ。季節は巡っても、同じ日は二度と戻ってこない。
とりとめなさすぎるけど、この楽しい気分が読者の皆さんに伝わっていたら嬉しい。
「あなたの幸福料理はなんですか?」
Sweet+++ tea time
ayako
今日の一冊
何度読んでも楽しい、どこか懐かしいエッセイ集。夏にビール片手に読んでいると、自由な気持ちになる一冊である。