正直に言おう。
最近、料理にハマっている。
「おいおい、嘘だろう…」
いま画面の向こうでぽかーんと口を開けて間抜け面になっているあなた、落ち着いてください。
「あんなクオリティーで、料理にハマっていると豪語するなんて…」
私のごはん日記の内容を思い出してガクガクと震えているあなたも。
なるほど私の作るものは「名もなき炒め料理」とその繰り返しばかりである。それを堂々とブログに載せてごはん日記まで書いているのだから我ながら度胸がある。
だが最近の私は本当に料理ブームなのだ。作ってみたいものがいろいろある。その証拠に日々増殖するiPhoneの「作りたいもの」メモを見てほしい。
「おにぎり」などというざっくりとした食べ物も並ぶ大胆なリストであるが、その情熱は伝わるであろう。
レシピが載ったツイッター、美味しそうなごはん写真が並ぶインスタ、料理ブログ・・・ありとあらゆる料理写真を眺めてはせっせとメモし、ページをブックマークし、聞いたことのない野菜を検索する。想像のつかない外国の調味料をAmazonの欲しいものリストに入れる。
夜遅くまで布団の中にiPhoneを持ち込んでは、作りたいものと食べたいもので興奮冷めやらぬ私なのである。
増やさないと決めていた料理本も増殖した。絶対に近寄らないと決めていた本屋の料理コーナーがお気に入りスポットに変わる。
聞いたことのないスパイスや外国の食品を見ては唸り、著者のコラム欄を読んでは頬を緩め、とにかく矢も盾もたまらず作りたい気持ちが爆発している。
では、作っているのか。作る料理はレベルアップしたのか。
否である。
私はあるときハタと気づいた。
自分は妄想の中で料理をするのが好きなのだと。
料理ブログ一つとっても、"そそる"ものと全く読む気がおきないものがある。後者はだいたいお料理の達人的女性がレシピを懇切丁寧に載せているやつである。大さじがどうの、小さじがどうの、ずらりと並ぶ材料も「面倒くさそうだなあ」という印象である。
私の大好物は、レシピの載っていないほぼ写真だけの料理ブログなのだ。インスタもそう。さらっと材料がコメントされているが、分量などは謎に包まれているのがいい。
「これどうやって作ってるんだろう…」
想像は掻き立てられ、食欲は膨らみ、レシピを検索し、「うわ、これめっちゃ簡単だ、こんど作ろう」と思ったり「なんだこの調味料…」とさらに検索の沼にハマる場合もある。いずれにしろ楽しい。正確な作り方はわからない。作れそうで作れない感じもいい。
これはお風呂の中で「出たら腹筋しよう!」と張り切り、飛行機の中で「帰国したら英語勉強しよう!」と決意するのに似ている。今すぐ実現不可能だから楽しいのである。
脳内でルッコラを買いに行き、脳内でフライパンにバターを転がし、脳内でナンプラーをさっと振ってパッタイ(タイ風焼きそば)を作る。
すべては布団の中やソファの上で展開されている。
一人暮らしの人の、生活感も感じられるテーブル写真は特に好きだ。
仕事から帰って、こんなおしゃれな煮込み料理を自分のために作って食べてるなんて…今日の写真は自然光だから休日か朝に作ったのかなぁ。いつもフライパンでパンを焼いてるから、トースターを置いてないワンルームか。バジルもパクチーも育ててるみたいだしベランダは南向きかなぁ。
勝手にライフスタイルや部屋の間取りまで想像する始末。もはや料理は関係ない単なる妄想癖である。
話は変わるようであるが、都内の素敵マンションで一人暮らしをするキャリアウーマンな妹(27)は全く料理をしない。
先日、すごく美味しかった肉豆腐の写真をラインで送った。
「これ15分で作れるよ」
「うちは醤油ない、みりんない、砂糖ない。15分で作れないじゃん」
会話は終わった。妹はさらにワンランク上の非料理人である。モデルルームみたいなおしゃれキッチンはピカピカで、彼氏が来てもデパ地下のお惣菜を並べる女だ。
だがそんな彼女に「クラシル」という動画料理アプリの話をしたら、こう言うではないか。
「知ってるよ〜!私もダウンロードしてよく見てる」
醤油もみりんも砂糖もない女がなぜこのアプリを見ているのか。
「これなら作れそう〜!と思いながら動画見るのたまんないよね。私、想像の中ではもう何品も作ってるから」
遺伝なの?
ねえ遺伝するものなの?
妄想料理好きの、身近な同士を見つけて震えている私である。
Sweet+++ tea time
ayako
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