年末年始、実家で久しぶりに妹に会った。
我が妹(27歳、キャリアウーマン、彼氏アリ、借金あり)は私と正反対の性格である。 書きたいことは山ほどあるが、今日の焦点は競争心というものについてである。
「負けたくないんだよね」
彼女は言った。シャネルの香水の匂いを振りまき、すっぴんでお寿司を頬張りながら。
「友達が出世したり昇級したりするの聞くと、すごい悔しいし負けたくないって思うんだ私」
これはもう、青天の霹靂であった。
こういう出世欲とか「勝ちたい」という気持ちを、私はどこに置き忘れてしまったのであろう?
私といえば、およそ競争心がない。出世はもちろん、スポーツもトランプも興味がない。中高生の頃は勉強で野心を燃やしていた時期もあったのだが、もう10年以上昔の話である。基本的に上野のシャンシャンも仰天の伸びきった心で過ごす日々。
総合職でドンドコ出世するキャリアウーマン路線からあっという間に脱落してしまったのもなんら不思議はない。
会社を辞めたあと、バイトしていた学習塾では、勉強を教える以外に講習案内のポスティングやチラシ配りといった仕事があった。「こんなことまでさせちゃって申し訳ないねぇ」と塾長は言ってくれたのだが、実はこれが一番お気に入りの仕事だったなんて言えない。
ウェブ系の会社では、記事を書く以外に、朝一でアルバイトがやるルーティーンの作業があった。オフィスの掃除や洗い物、お茶のセットや観葉植物への水遣りといった庶務的な諸々。これをやりたいばかりに、朝9時からのシフトを死守していたなんて言えない。
お気づきであろう、AIにあっという間に駆逐されるタイプの人間なのである。
銀座で年内最後の物欲を爆発させて来たらしい妹は「2017年のまとめを一人一人言っていこう」と提案した。高級そうな服を身にまとい、ビール片手に自分の一年を饒舌に振り返り始める。
「今年はマネージャーになって、やっぱ裁量も上がるし社内での扱いも変わったよね」
「30歳までには年収〇〇円は欲しいしさらに好条件の転職も考えてる」
無臭のすっぴんでこちらもお寿司を頬張りながら、ふんふんと頷く姉(29歳、零細自営業)。
妹は得意げに話し終えると、私のターンを呆気なく抜かし、「次は2018年の目標を言い合おう」と提案した。
自他共に認める見栄っ張りキャリアウーマンの妹。いったいどんな目標なんだろう。
「2018年の目標はね…」
母と私が見つめる前で、こう言い放った。
「寝る前に歯磨きをすることかな」
「勝ちたい」気質の我が妹、生活では完全なる「負け組」なのであった。
そうである。
異次元に暮らす二人だけど、一緒にいるとやっぱり楽しい。お正月日記でした。
Sweet+++ tea time
ayako
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▽真の勝ち組とは…▽
▽妹の話1▽
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