成長、それは幻の概念である。

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先日、夫が面白い動画を見せてくれた。

いわゆる「すぐにやる方法」みたいなライフハックを説く番組で、有能そうな欧米人が「5秒ルール」なるものを提唱していた。

溜め込んでるタスク、簡単な家事、気の重い仕事、朝起き上がる瞬間、先延ばしにしたり後回しにしてしまう様々なもの。それらを一気に片付ける画期的方法だという。内容は書き出すと笑えるが、「5、4、3、2、1、GO!」と心の中で唱えて勢いで取り掛かればいいらしい。この5秒という時間が重要らしく、これ以上長いと脳は「やらなくていい理由」を考え出してしまうという。だからその前に動いてしまえばいいという理論である。

「ははぁ…なるほど、5秒ルールかぁ…」

「これでなんでもスグできるのかなぁ…」

*・*・*

 

この動画を見ていたら、自分が中学三年の冬休みに実践していた「画期的な勉強方法」を思い出した。

それは「朝目が覚めたら即座に机に向かう」というものであった。歯も磨かないし顔も洗わない、もちろん朝食も食べないし家族と会話もしない。目やにがついたままとにかく机に向かう。

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なぜなら最初に朝の支度などを丁寧にやっていると、勉強を始めるのがものすごく億劫になるからだ。朝食を食べて歯を磨いて家族と会話をし、ちょっとテレビでニュースなども見てしまえば平気で10時台になっている。もう昼が目の前である。リビングから勉強机に移動するハードルは絶壁級になっている。

おのれのダラダラした性格を自覚していた私は、目が覚めたら秒で勉強机に向かった。寝ぼけ眼でテキストを読み、問題集を唐突に解き始めた。最初のうちは夢の中という感じであるが、次第に気分がのってくる。のってきたあたりで空腹も限界になるので、朝食を食べたり歯を磨いたりする。ここでようやく目やにも落とすわけである。

しかし顔を洗ったりしつつも、頭は机の上でやっていたことが気になっている。したがってすぐさま再開できる。「再開」することと「始める」こと、それはまったくエネルギーの違うものなのである。

中二の冬まで塾にも通わずのんびり過ごしていた私は、この方法で受験期を乗り切ったのであった。

*・*・*

 

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私と夫はソファの上でiPhoneの画面をじっと覗き込んでいた。そこには人生を成功へと導くすべての秘訣が詰まっているような気すらしていた。

今、先延ばししている最も面倒なタスクを頭に浮かべ、「5、4、3、2、1、GO!」で即座に始めろと欧米人の彼は言っている。

その時、私の「先延ばしにしている最も面倒なタスク」は「入浴」であった。だが「5」と数え始める前に「嫌だッ!」という声が脳内に響いた。数えたらお風呂に入らなければならない。恐ろしいではないか。

「5秒数え始めること自体が恐いよ」

すると夫は閉じていた目を開けて言った。

「僕の場合、脳が優秀すぎて、1秒で『今やらなくていい理由』を考え出せたよ

*・*・*

 

成長。それは幻の概念である。

冬の早朝、かじかむ手で問題集を開いていた中学生の私は、将来自分が5秒数えることすらできない立派な大人になるなんて想像すらしなかっただろう。そしてこんなポジティブ全開な夫と、爆笑の日々を過ごしていることも。

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そう信じたい。

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Sweet+++ tea time
ayako

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