Sweet+++ tea time

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心惹かれる場所には、たいてい名前がない。『ほじくりストリートビュー』

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心惹かれる場所には、たいてい名前がない。

「深いグリーンの煉瓦に、色とりどりの植木鉢がきれいな場所」

色の雰囲気とか、光のさす感じとか、たまらなく好きだなぁと思って通るたびに気になってしまう。

それは「東京のどの町が好き?」みたいに他人と会話が弾むようなテーマですらなく、本当に些細で絶妙で自分のツボを刺激する場所である。(それで日記に書いている!)

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川沿いの、この小さな道も。

左側の柵を登ったところには、小名木川が流れている。道沿いには古着屋さんがあって、川の方に入る階段の下で、すごく人懐っこい猫に出会ったこともある。

私を愉快にしてくれる場所には、いつも名前がないのだ。

*・*・*

 

そういう名もなき場所ひとつひとつにスポットライトを当てた、とっても面白い本がある。

神保町の三省堂書店で見つけた、能町みね子さんの『ほじくりストリートビュー』である。

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先週末、本屋さんでこの本を見つけ、パラパラっとめくってもう、瞬時に心を射抜かれてしまった。「言葉ではパッと表しにくいけど好きなもの」を、絵と写真と言葉で、こんなふうに描いてくれているなんて!

それはガイドブックに載っている誰が見ても美しい絶景とはまた違った、ステキで不思議で魅力あふれる一角なのである。

 

通り過ぎて忘れていた"好き"を思い出す

この本で扱っている地域は関東であるが、どこに住んでいても楽しめる本だと思う(たとえ外国でも!)

実際にその場所に行ったことがあるとかは正直関係なくて、自分の記憶の中で共鳴するもの、忘れていた"好き"がよみがえる瞬間、そういうのをじんわりと楽しむ一冊だからだ。

たとえばこれ。

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「新幹線から見える気になる住宅群」

あるある!こういうのある!

通勤や通学で、いつも同じ電車に乗っていると、窓の外の町並みに、必ず気になる場所が出てくる。屋根がかわいくて妙に気になるアパートとか、トトロの世界みたいにこんもりと盛り上がった緑の向こうに鳥居が見える神社とか。

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高校生の頃、千葉中央まで向かう電車の中で、検見川神社の風景がいつも気になっていた。樹木が生い茂る小高い丘に、長い石の階段と鳥居が見える。でも、一度も降りて行ってみたことはない。

行ってみたいなぁと毎日思いながら、卒業してしまった。そんな風景やお店はたくさんある。

*・*・*

 

もうひとつ挙げてみよう。

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「天国のような立地のスターバックス」

ああ、タイトルからして、なんて素敵!

チェーン店であっても、心くすぐられる店舗というのがあるのだ。私なら「八重洲さくら通りにあるスターバックス」とか「神保町のリトルマーメイド」とかだなぁ。「白金台にあるBOOK OFF」も、おしゃれなカフェがくっついていて大好きだった。

 

一人暮らしの風景を思い出してしまった

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「麻布十番が好き」なんて言うと今は少しチャラい感じがするけれど、実は下町の部分もあるし、とんでもない路地もあるのです。

こんなふうに始まる、セレブタウンの意外な一角を紹介するページを読んだときは、一人暮らしをしていた頃を思い出してしまった。

24〜25歳の一年半、私は港区の白金高輪駅からほど近い、古い団地的マンションに住んでいた。"白金"というとすごく高級住宅街なイメージだし、近くには見上げるようなタワーマンションもあった。そこから出てきたマダムが犬を連れて駅前のスタバのテラス席に座っているのもよく見た。

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でも、実際に歩いていると無数の予想外な風景に遭遇するのだ。古い平屋や昭和な一角がたくさんある。「白金台」はセレブタウンだけど、一駅隣の「白金高輪」は下町なのだ。

「ものすごい都会だと思ってたけど、なんだか昭和なんだなぁ」

初めての東京一人暮らしで、私はぽかんとしてしまった。

老舗すぎるパン屋さんで、腰の曲がったおばあさんから手作りのサンドイッチを買って会社に行った(値段も恐ろしく安い)。果物や野菜に、直接マジックで値段を書いている謎の八百屋さんがあった(さすがに買ったことはない)。

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会社帰り、お花屋さんのおじさんに育て方を教わって、よく植木鉢を買った。お風呂が狭すぎたので、夜は風呂桶とタオルを抱えて、徒歩2分の銭湯に通った。

真っ黒いコーヒーみたいな温泉に入れる小さな銭湯は450円で、綺麗なマンションの一階にのれんが下がっていた。夏は蚊取り線香の匂いがしたんだった。

その頃も私はレトロな部分に惹かれていたので、やっぱり下町好きなのだ。

 

ステキなものを、どんどん忘れる日々だけど

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こんなステキな路地があったから満足です。

ほんとほんと、その気持ち。

私たちは今までに出会った「ステキなもの」を、すべて覚えておけるわけじゃない。記憶の引き出しには入ってても、普段は忙しい生活の中で引き出しの存在自体忘れている。

だけど一冊の本で、何かの折に、好きだった場所とか瞬間とか誰かの言葉を、ふっと思い出す。

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△最近心を鷲掴みにされてしまった、月島の路地(で黒柴を撫でる夫)

この本は、そんな宝物が眠る引き出しを、ひとつひとつ開けてくれる、小さな鍵なのだ。

 

おまけ

ここまで私が間に挟んだ写真はすべて、清澄白河と月島という東京下町ど真ん中の風景である。白金高輪に住んでいた頃に撮った写真は、iPhoneの買い替えを繰り返しているうちに、どこかに行ってしまった。

最後に、前にも載せたんですが、一枚だけ持っている白金の風景写真を。

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その頃もやっぱり、階段の脇に咲いてる薔薇とか、こういう場所に惹かれてたんだね。

 

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ほんとだね。

肌とか体力も、変わんなくていいんだけどね。(そっちは変わる)

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Sweet+++ tea time
ayako

今日の一冊

イラストもいっぱいでボリューミーな一冊です。さっそく重版になりましたね!(だって面白いもの!)

 

こっちもおすすめ

同じく能町みね子さんの大好きな一冊。古い味のある建物での暮らしを淡々と綴った日記が、絶妙にはまってしまい何度も読んだ。

 

こちらもどうぞ

▽能町みね子さんの本の話▽

sweeteatime.hatenablog.com

▽私の好きな散歩道▽

sweeteatime.hatenablog.com

▽ひとり暮らしの部屋▽

sweeteatime.hatenablog.com