Sweet+++ tea time

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小さなスクリーンに映し出される、大きな悲しみ。『わたしは、ダニエル・ブレイク』

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パソコンが使えない人を、笑えるだろうか?

スマホが使えない人を、笑えるだろうか?

私は笑えなかった。どころか涙が出てきてしまった。

小さなスクリーンに映し出された大きな悲しみに触れてしまった、土曜日の映画日記である。

*・*・*

 

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『わたしは、ダニエル・ブレイク』は、イギリス北東部、ニューカッスルを舞台に繰り広げられる物語である。

主人公のダニエル・ブレイクは長年大工として真面目に働きながら、精神的な病にあった妻を看取り、実直に働いてきた。大工の腕はすばらしく、木材で本当に素敵な本棚や雑貨を作り出すことができる職人でもある。

danielblake.jp

だがある日、心臓の病でドクターストップがかかってしまう。働きたいのに働けない。国の援助を受けようにも、なかなか手続きは進まない。

形式張った無意味な質問を繰り返されたり、役所の電話がなかなか通じなかったり、働けないのに求職活動をしろと要求されたかと思えば無意味な講座を強制で受けさせられたり。人間の尊厳を奪うような国の制度という壁に、げんなりする日々が描かれる。

*・*・*

 

こんなシーンがある。

大工仕事なら一流にできるけど、パソコンはさっぱりという59歳のダニエルに、国の制度はことあるごとにPCを使わないと進めないオンライン手続きを要求してくる。そのたびに四苦八苦して、カーソルの動かし方、画面のスクロールの仕方から戸惑うダニエル。

これは映画のほんのワンシーンでしかないのだが、わたしはここですごく悲しくなって涙が出てしまった。

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いまの私はPCやインターネットが好きだし新しいことを覚えるのも大好きだけど、ダニエルの年齢になってもそうかと問われれば、そんなのまったくわからない。

世界は加速度的に変化のスビードを上げるし、ひとりの人間自体はゆっくりと老いていくのだから、自然に考えれば、いつかはきっとわからなくなる時がくるだろう。

そんなとき、私は誰かに頼めるだろうか。どんな気持ちだろうか。

*・*・*

 

この物語の大きな軸はしかし、ダニエルと若い女性ケイティの友情にある。

ケイティは、ロンドンから理不尽な仕打ちに遭いニューカッスルに越してきた、二人の子どもを連れたシングルマザーである。役所の手続きが難航し冷たい態度を取られているケイティをダニエルが助け、そこから交流が始まる。

 

 

懸命に生きるケイティにも、悲しいこと、生きていくために諦めなければいけないことが次々と起きる。

なかでも忘れられないのは、ケイティが子どもを連れてフード・バンク(寄付された食料や日用品をもらうことができる施設)に訪れたとき、棚に並んでいた缶詰をその場で開けて泣きながら食べてしまうシーン。

「何日も食べていなくて…」

子どもの食べ物を優先し、毎日の生活に追い詰められて、「みじめだわ…」と泣き出してしまうケイティに、ダニエルがいう。

「君は何も悪くない。立派な母親だ」と。

*・*・*

 

パソコンができなくても、誰かや何かの制度に頼らないと生きていけない時がきても、懸命に暮らしてきた。本当に"何も悪くない"のだ。堂々と暮らしていい。

でも、決してそうはさせてくれない現実と向き合いながら、優しさのあふれる人々のエピソードに、映画館でたくさんの涙をこぼしてしまった。

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△渋谷のアップリンクの小さな映写室。椅子ではなくて、背もたれ付きのクッションに座って鑑賞した。お家みたい。

*・*・*

 

唯一の救いは、この物語に登場するアパートの仲間や、求職者手続きのPCルームでたまたま隣り合ったひと、街中で偶然通りかかったひとも、一人一人はとても親切であたたかいということだ。

融通の利かない役所のスタッフのなかにも、一生懸命オンライン手続きを手伝ってくれたり一人の人間として会話をしてくれるひともいる。

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私はブログでもショップでも、綺麗なもの、明るいもの、楽しいことを照らすようにしていて、こういう悲しく非情な現実を前にしたとき、自分にできることって何もないなぁと途方に暮れてしまう瞬間がある。

せめてひとりの人間として、親切で優しく、あたたかくありたい。それしかできることがない。言葉にするとつまらないかもしれないけど、でもいつだって、基本的なことは一番大事なのだと思う。

親切とか優しさ。それは学校の道徳の時間に教わって納得するものではなく、大人になって、こんな一本の映画を見て心にしみるものなのだ。

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映画は、やっぱり、やめられないね。

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Sweet+++ tea time
ayako

今日の映画

私は渋谷のアップリンクで観ました(今は東京だとここでしか上映していないみたい)。悲しさと優しさがいっぱい詰まった映画でした。

 

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