言っても言われても楽しい言葉。「帰りにコンビニ寄る?」

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「帰りにコンビニ寄る?」

お酒を飲んで楽しくなると、夫が必ず言う言葉である。

私たちは二人ともお酒が好きなのだが、外で飲んでちょっと楽しくなると夫はどこかに寄り道したくなるようだ。「このまままっすぐ帰るのはもったいない」的気分になるらしい。

ゲームセンターもダーツバーもカラオケもない、イオンみたいな大きなスーパーマーケットもない東京下町で、寄り道といえばコンビニになる。

それで冒頭のセリフである。

「帰りにコンビニ寄る?」

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心地よく酔った彼は、コンビニの小さなカゴにアイスとかおつまみを放り込んでウキウキし、私にも何か入れるように要求してくる。

先だってコンビニで、「東京都内の温泉案内」みたいな本を何気なく見ていたら、

「買おうッ!」

本は私の手から抜き取られ、アイスやおつまみと一緒に勢いよくカゴに放り込まれた。

昼のコンビニで私が欲しい雑誌を買おうか迷っていると「やめときな」と必ず購買欲を制してくるのに夜のコンビニではこうである。ふくらんだ購買欲を胸に、しろくまみたいな大きな体で店内を徘徊している。

今日も楽しい気分になってるという証拠であり、その分かりやすさは感動的ですらある。が、確実に必要のないものを買っているので賢いお金の使い方とは間違っても言えない。夜のコンビニは恐ろしい。

*・*・*

お酒を飲んで楽しくなると、夫は財布の紐も緩くなるようだ。

以前、別の町で居酒屋を出たあとアトレに寄った。私がちょっと高い紅茶を一箱手に取ったら、

「買おうッ!」

勢いよく奪ってレジに突進した。

(こりゃあ陽気になってるな…)

私がもう一箱紅茶を追加したことはいうまでもない。

*・*・*

一人暮らしをしている私の妹は、夫と同様、お酒に酔うと陽気になってコンビニでなにやかにや買ってしまうという。記憶もないらしい。

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それである日目覚めたら、枕元にお米が一袋ドサッと置いてあったそうだ。

お酒を飲んだあと炭水化物を取りたくなる現象自体は、よくある。

「おにぎりとかならまだしも、リアル白米だよ」

すごいショックで持て余しているという妹に私は言った。

「お米なら使えるからいいじゃん」

「米なんて炊かない」

性格の違いすぎる姉妹の会話は終わった。

しかし想像すると楽しい。20代半ばのOL姿の女の子が、お酒に酔ってふらりとコンビニに入り、「あきたこまち」一袋を取ってレジに行く。重いお米を抱えて家に帰る。そしてベッドにダイブ。その姿を思い浮かべるたびにほくそ笑んでしまう。

*・*・*

私はといえば、酔ってコンビニに行きたくなったり必要のないものを買いたくなったりしたことは、ない。覚えてる限り、まったくない。一人暮らしのときもほとんどコンビニを使わなかったし、お酒を飲んでもまっすぐ家に帰る。

宝くじも買わないしゲームセンターでUFOキャッチャーをやることもない。確実に欲しいものを確実に手に入れられる方法にしか、お金を使わないタイプなのである。

それは「賢いお金の使い方」かもしれない。でも、と思ってしまう。ほろ酔いでふらり、煌々と明かりを放つ夜のコンビニをのぞく楽しさは、味わえない。

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妹はお米をちゃんと炊いただろうか。

ちなみに、夫によってカゴに入れられた「東京都内の温泉案内」みたいな本は、未だに読まれることなく部屋の隅っこに転がっている。

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ほんとに、ほんとにそうだと思う。

でも、言っても言われても楽しい「帰りにコンビニ寄る?」なのである。

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Sweet+++ tea time
ayako