大好きな散歩道がある。
その道にはパン屋さんがあってお惣菜屋さんがあり、食器屋さんに雑貨屋さん、落ち着く喫茶店がある。
ビルと住居の間に突然鳥居が出てきて、奥に小さな神社もある。少し進むと短い橋がかかっている。近くを大きな川が流れていて、交差点の一角に、たくさん花が咲いてる場所がある。
今日はそんな、私の大好きな道の話をしようと思う。
隅田川に沿う、下町の渋い一本道
地下鉄森下駅の方から歩いてきて、新大橋の交差点を右に曲がる。
両国方面へと向かう、なんでもない普通の道だ。でも妙に好き。初めて歩いたときから、ずっと好き。
花の咲く道
隅田川に沿って横たわる小さな通りには、誰かが植えた色とりどりの花が古い建物と古い建物の隙間を埋めるように咲いている。
この道を歩きながら、カメラで花の写真をよく撮った。
あれ? なんか色彩が違う。
そう、これは去年の春に撮った写真なのだ。
東京にも雪がちらつく冬深い二月の今、こんなカラフルな花を見ちゃったら、どんどん春が恋しくなる。
四月の終わり、紫陽花はびっくりするぐらい濃い色で軒先を飾っていた。
古い建物と小さなお店
前を通るといつも入ってみたいと思うのに、なぜかまだ入ったことのないお店というのがある。ここがそう。小さなパン屋さん。
築地のORIMINE BAKERS。築地七丁目が本店で、勝どきと、ここ新大橋の3店舗。次に散歩したら、絶対ここでパンを買って帰ろう。
インテリアグッズを売っている雑貨屋さんFOREST AREAがあって、
江戸時代の文化二年からやっているうつわ屋さん一元ヤがある。
店先まで並べられた色とりどり器たちのつるりとした表面を、春の風が優しく撫でていく。
建物の隙間に江島杉山神社
この道には神社もある。
建物と建物の間にひっそりと立つ小さな鳥居。住宅地の中に突然現れる、江島杉山神社。
私はさらに奥までいったことがないけれど、どうやら池があり、池のほとりには洞窟があるらしい。岩屋というのか。
今度散歩したときには、奥まで進んでみよう。
花がたくさん咲いてる一角
ここには不思議なくらいびっしりと花の植木鉢が敷き詰められていて、雑多な東京の街の小さなポケットみたいだと思う。
洗練されたガーデンじゃなくて、不揃いな植木鉢や発泡スチロールっぽい入れ物にいろんな花が咲き乱れてる。でもちゃんと手入れされている気配がたしかに漂う。
誰かが植えて、誰かが水をやっている花が、通りかかった私に優しい。
私は一人でいるのが好きだけど、本当に一人でいるわけじゃないんだと思う。
小さな橋を渡ったら次の街につながる
一之橋を渡って、大通りを隅田川の方に向かって歩き、両国橋を渡ったら、馬喰町や浅草橋がもうすぐ目の前に来る。
こんな感じの一本道だ。
近くを隅田川が流れているけれど、この道からは水は見えない。でもちょっと小道を曲がれば隅田川テラスに出られて、真っ青な空と大きな川と、その川の上を進む船が何艘も見える。
街に優しさというものがあるとしたら
街に優しさというものがあるとしたら、それはこんな道を歩いている瞬間だろう。
東京下町に住んで、もうすぐ四度目の春を迎える。
付き合っていた人と二人暮らしを始めた街。会社を辞めて、一人で仕事をするようになった街。他愛のないことを喋りながら一人で、二人で歩く街。EAST TOKYOが私は大好きで、今のところまだ飽きる気配がない。
静かで、でも静かすぎなくて、暮らしてくのにちょうどよい息遣い。新しい建物も古い建物も、誰かが植えた花も勝手に生えてる雑草も、みんなよい顔をして太陽の光を浴びている。
お気に入りの喫茶店に寄って帰る
感じの良い喫茶店があることも、この道のいいところ。
最後は、お気に入りの喫茶店の話をして終わりにしよう。
花の植木鉢がぎっしりと詰まった空間に、映水庵の立て看板を見つけた。春の最初の頃だった。
ボードに白のチョークできちんと書き込まれたメニューに、うつくしく活けてある花。
このお店は丁寧にやってるんだろうなあというのは、入る前にも滲み出る。
キーマカレーのランチ。大好きな目玉焼き・オン・ザ・カレー!その場で焼いて乗せてくれた。
私は目玉焼きが大好物なので、目玉焼き・オン・ザなんとかは、全部好き。
のってるだけで、確実にうきうきしてしまう。
驚くべきことに、この日はチーズケーキまでセットで付いていた。飲み物の紅茶も。(曜日によって違うみたい)
ぎっしりと詰まったチーズの味が、口の中でほどけていった。どこまでも優しい味がした。
おまけ:散歩のお土産
映水庵で、ウサギの形をしたクッキーを買った。か、かわいすぎやしないですか。
私はこの大好きな散歩道のことを、いつかここに書きたいなとずっと思っていた。
近所に住んでる人にしか意味がないかといえば、そんなことはないと思う。だってあなたの住む街に、きっと好きな道はあるから。
ちょっと哲学的なことを言う緑くんであった。
清澄白河カフェ日記、いろいろ書いてます。
お散歩日記もあるよ。
Sweet+++ tea time
ayako